AWS,医療・製薬分野における戦略的ビジョンや生成AIソリューション「HealthData × Agent」を発表

2025-10-14

ヘルスケアIT

AI(人工知能)


写真左から五島 聡 氏(浜松医科大学),山本昌司 氏(第一三共),堤 浩幸 氏(アマゾン ウェブ サービス ジャパン),大場弘之 氏(アマゾン ウェブ サービス ジャパン)

写真左から五島 聡 氏(浜松医科大学),
山本昌司 氏(第一三共),
堤 浩幸 氏(アマゾン ウェブ サービス ジャパン),
大場弘之 氏(アマゾン ウェブ サービス ジャパン)

アマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWS)(同)は2025年10月7日(火),JPタワーホール&カンファレンス(東京都千代田区)において「AWS 製造 & 医療・製薬シンポジウム 2025」を開催した。これに合わせ,報道関係者向けに「医療・製薬分野における戦略的ビジョン発表 記者説明会」を実施し,戦略的ビジョン「Journey for 2030 データがつながる,価値を生む」や生成AIソリューション「HealthData × Agent 」を発表した。
記者説明会において,同社常務執行役員エンタープライズ事業統括本部長の堤 浩幸氏は,「Journey for 2030─AWSのヘルスケア・ライフサイエンス領域における戦略的ビジョン」と題した発表の中で,AWSは生活者・患者体験を起点としたヘルスケア・ライフサイエンス業界における共創の場を提供するとして,音声から診療会話要約とノート作成を行う「AWS HealthScribe」などの医療向けのサービスが拡充していることをアピールした。
その上で,Journey for 2030について紹介。一人の患者をミクロからマクロまでシームレスにデータでつなぐ「『縦』のつながり」と,異なる組織・機関間のデータをつなげた患者や疾患の横断的な理解を可能とする「『横』のつながり」による医療データの統合的な活用を推進すると述べた。この縦と横のデータの統合的活用により,診断の早期化・高精度化や完全個別化医療,創薬・治験の高速化といった革新的な患者体験を実現する。その実現に向け,AWSでは,テクノロジー基盤として「データ連携/統合」「生成AI/業務支援」,DX推進体制として「セキュアな利活用」「共創と人材育成」のためのソリューションを提供していく。データ連携/統合については,多様な医療データの統合と相互運用性の向上,組織・システムの壁を超えたデータ連携を可能にする。また,生成AI/業務支援に関しては,生成AIによる診療・研究業務の効率化,包括的なデータ統合で患者・疾患理解の深化に取り組む。セキュアな利活用としては,信頼性の高いデータ管理環境の提供,ゼロトラスト設計と監査性で安心な共同研究を推進する。さらに,共創と人材育成のために,医療・製薬現場に根ざしたDX人材を育成するとともに,ITとビジネス部門両軸の内製化を支援する。

革新的な患者体験の実現に向けてAWSが提供する価値

革新的な患者体験の実現に向けてAWSが提供する価値

 

この4つのうち,生成AI/業務支援のためのソリューションとして提供されるのが,HealthData × Agentである。HealthData × Agentは,医療機関や製薬企業向けの生成AI開発のデモやAIエージェントツール群で,AWSユーザーを対象に10月7日から公開されている(ユーザー以外も視聴など可能)。医療機関ユーザー向けには,「診療記録」「臨床意思決定支援」「医療データ統合/活用」の3カテゴリのトピックが用意される。診療記録としては,「退院サマリー生成アシスタント」や「生成AIによる読影レポートのサマリ生成」「音声入力によるSOAP文章生成」などのデモ動画の視聴や資料の閲覧が可能。臨床意思決定支援としては,「AIエージェントによる褥瘡マットレス選定」「医療機器管理AIエージェント」などが用意される。さらに,医療データ統合/活用では,「医療データのFHIRマッピング」「医療データ AI Agent Assistant」が利用できる。これにより,AWSユーザーは施設のニーズ,目的に応じたAI開発を容易かつ短期間で行うことが可能となる。

AWSが提供する生成AIソリューション「HealthData × Agent」

AWSが提供する生成AIソリューション「HealthData × Agent」

 

堤 浩幸 氏(アマゾン ウェブ サービス ジャパン)

堤 浩幸 氏(アマゾン ウェブ サービス ジャパン)

 

記者説明会では,ヘルスケア・ライフサイエンス業界のAWSユーザーのプレゼンテーションも行われた。ライフサイエンス業界のユーザーとして,第一三共(株)研究開発本部研究統括部研究イノベーション企画部長兼研究企画グループ長の山本昌司氏が,「AWS基盤によるDiscovery Research DX の加速」と題して発表した。山本氏は,製薬業界における成功確率の低さや開発コストの高騰といった課題を挙げ,同社が取り組む創薬研究として,生成AIなどのデジタル技術を用いたラボスマート化による次世代DTMA〔Design(分子設計)–Make(合成)–Test(実績と評価)–Analysis(データ解析)〕サイクルについて解説。米国の開発拠点「スマートリサーチラボ」を紹介した。

山本昌司 氏(第一三共)

山本昌司 氏(第一三共)

 

また,ヘルスケア業界のユーザーとして,国立大学法人浜松医科大学医療DX担当病院長特別補佐の五島 聡氏が「浜松医科大学の取り組み─GenUを用いた医療情報利活用」をテーマに発表した。五島氏は,静岡県の地域医療を担うために準備を進めている,厚生労働省の医療DX施策「全国医療情報プラットフォーム」の仕組みの一つ「電子カルテ情報共有サービス」の開始に向けた取り組みを報告した。また,医療従事者の働き方改革を実現に向けて,AWS上に構築した生成AIデータ活用基盤を説明。「Generative AI Use Cases JP(GenU)」の実証として,議事録やサマリ作成などの使用経験を紹介した。五島氏は,まとめとして,教育・研究・診療という大学病院の使命を果たすために,医療リソースの可視化および地域医療の基盤構築にAWSと取り組んでいきたいと述べた。

五島 聡 氏(浜松医科大学)

五島 聡 氏(浜松医科大学)

 

国を挙げて医療DXが進められる中,医療分野での生成AIの活用も広がっている。AWSの提供するソリューションが医療分野のAI活用と医療DXの推進に寄与し,日本の医療が抱える課題解決に寄与することが期待される。

 

●問い合わせ先
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社
https://aws.amazon.com/jp/

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