AWSジャパン,医療・社会課題の解決に向けた包括連携協定を締結
2025-10-14

AWSジャパンと神戸大学が包括連携協定を締結
右から,黒田良祐氏(神戸大学医学部附属病院),
村上卓道氏(神戸大学大学院),
宇佐見 潮氏(AWSジャパン),
宮西正憲氏(神戸大学大学院)
アマゾン ウエブ サービス ジャパン(同)(AWSジャパン)は10月2日(木),神戸大学大学院医学研究科ならびに同大学医学部附属病院と医療・社会課題の解決に向けた包括連携協定を締結することを発表し,同日,同大学医学部福利厚生施設内の神緑会館記念ホール(兵庫県神戸市)およびオンラインにて締結式・記者発表会を開催した。
わが国は現在,超高齢社会や地域の過疎化による通院困難者の増加,地域医療格差といった医療・社会課題に直面しており,それらの解決に向けた対策が求められている。そこで,本連携においては,同社が提供するクラウドや生成AIといった最先端技術・サービスを活用した革新的な医療アクセスソリューションの構築を通じて,医療MaaS(Medical Mobility as a Service)の開発を支援し,「神戸医療DXモデル」を中心とした医療デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進をめざすとしている。
記者発表会では,同大学大学院医学研究科長の村上卓道氏,同大学医学部附属病院長の黒田良祐氏,同大学大学院医学研究科医科学専攻生化学・分子生物学講座細胞医科学分野教授の宮西正憲氏,同社常務執行役員パブリックセクター統括本部長の宇佐見 潮氏の4名が登壇した。
最初に挨拶に立った村上氏は,同研究科が注力している取り組みの一つとして,人工知能(AI)やビッグデータを活用した医療MaaSのような革新的な社会実装型研究を挙げた。また,神戸発の臨床・研究・教育・産業・自治体の共創基盤である神戸未来医療構想について概説し,国産初の手術支援ロボット「hinotoriサージカルロボットシステム」の開発を含め,産学連携の研究開発が加速している現状を紹介。その上で,異分野共創によって普遍的な価値を世界へ拓くという理念を確実に社会へと橋渡しするために,同社との協働は大きな力になると述べた。
次に,黒田氏は,大学病院の医療現場で最も不足しているものは「人の時間」であるとし,人がやるべき仕事に集中できる構造転換のための第一歩がスマートホスピタル戦略であると述べた。その実現のためには,安全かつ拡張性と運用性を備えたクラウドが不可欠であり,同社との連携によって,患者の体験と職員の働きやすさを同時に高められると強調。新たな医療提供の常識を創造する病院像として,フルオートホスピタル構想を掲げた。
続いて,宇佐見氏が,同社の取り組みや同大学との連携について概説した。公共分野における同社の取り組みとして,クラウドによって誰もが高度な技術とさまざまなデータを簡単に利用可能となる社会の構築,すなわち「テクノロジーとデータの民主化」を図ることをめざしていると述べた。また,同大学との連携においては,クラウドとAIを基盤とした次世代医療プラットフォームである医療MaaSの構築を通じて,医療アクセスの向上から研究開発の加速まで,包括的な医療イノベーションを実現する「神戸医療DXモデル」の構築を支援していくと語った。
最後に,同大学大学院医学研究科の宮西正憲氏が,今回の包括連携協定の概要を報告した。同大学における医療MaaSのコンセプトとして,人・モノ・データが患者一人ひとりに紐付いており,検体・薬・データが安全かつ統合的に循環する仕組みであると定義した。また,その実現の柱として,データ統合,知見の教材化,信頼性の確保,地域社会への展開の4つを挙げた上で,同社のクラウドを活用し,セキュアで拡張性のある仕組みとして運用することで,現場の変化を加速し,神戸から人に寄り添う医療を実現したいと展望した。さらに,同社との連携によって実現したいもう一つの柱として,次世代のグローバル人材育成のための環境づくりを挙げ,教育なくして革新は継続しないと強調した。