バイエル ソリューションレポート
2025年7月号
マルチユースCTインジェクションシステムユーザー会「Centargo Connect」
「“DO LESS. CARE MORE.”をあなたの現場でもっと実現するために」をテーマに第1回ユーザー会「Centargo Connect」を開催
バイエル薬品(株)は,マルチユースCTインジェクションシステム「Centargo CT インジェクションシステム」をより効果的に活用するための交流イベントとして,ユーザー会「Centargo Connect」を企画した。2025年4月12日(土)に開催した第1回ユーザー会では,「“DO LESS. CARE MORE.”をあなたの現場でもっと実現するために」をテーマに,山口大学医学部附属病院の久冨庄平氏の司会の下,岡山大学病院医療技術部放射線部門副診療放射線技師長の赤木憲明氏が「なぜ2台目? その理由と活用方法」と題して講演を行った。
![]() 座長:久冨庄平 氏 |
![]() 演者:赤木憲明 氏 |
開催日:2025年4月12日(土) 会 場:パシフィコ横浜ノース(神奈川県横浜市) 座 長:久冨庄平(山口大学医学部附属病院) |
岡山大学病院の現状と2台目のCentargo導入に至る経緯
当院の総合診療棟のCT室は操作室を中心にレイアウトされ,それとは別に救命救急センターでも救急専用のCT装置が稼働している。CT検査数は年間約3万5000件,1日平均約150件で,検査の外来比率は約70%,造影検査比率は45%超である。手術やIVRの件数が多く,それに伴う術前検査が多いのが特徴である。
一方,医療機関を取り巻く厳しい経済状況の中,当院のCT部門もさらなる経営改善への方策が求められている。光熱費や物価の高騰による負担に加え,2024年に施行された医師の働き方改革により,これまで医師の長時間労働に支えられてきた大学病院では勤務時間管理の厳格化が進み,さらに地域医療再編による医師派遣などに大きな影響が想定されることから,それらに伴う人材確保のための人件費も大きな負担になる。
これらの問題に対応すべく,人材の効率運用や経費削減への期待から,当院ではマルチユースCTインジェクションシステムであるCentargoの導入を検討。CT装置の更新に併せて2023年11月に1台目のCentargoを導入した(図1)。その前年にフォトンカウンティングCT「NAEOTOM Alpha」(シーメンスヘルスケア)を導入していたことから,試験的にCentargoをNAEOTOM Alphaと80列マルチスライスCT「Aquilion Serve SP」(キヤノンメディカルシステムズ)の2つの検査室間を移動させて使用する運用を開始した。2部屋での使用により,1日あたり16〜28件の検査に用いられている。
さらに,2024年11月に320列CT「Aquilion ONE/INSIGHT Edition」(キヤノンメディカルシステムズ)と同時に2台目のCentargoを導入し,同装置と「Aquilion Precision」(キヤノンメディカルシステムズ)での併用を開始した。
いずれもケーブルを延長し,Centargoの操作ユニットを各装置のコンソール近くに移動させて使用する。Centargo本体は,夜間充電により日中はワイヤレスで使用できる。このような運用により,デイセットの有効利用が可能になっている。

図1 当院のCentargoについて
Centargoの検査フローと導入のメリット
当院では,静脈路確保は外来検査ではCT処置室で,入院検査では各病棟で看護師が行っている(図2)。2台のCentargoの立ち上げは同時並行で行い,業務終了近くになるとCentargoへの造影剤補充量の調整や検査の振り分けを行うことで,造影剤の廃棄量を削減する工夫をしている。
また,Centargoには以下のような多くのメリットがある。

図2 当院でのCentargo検査フロー
●造影技術
Centargoは,検査に応じた生理食塩水の後押しが事前準備不要で行えること,また,造影剤と生理食塩水の注入割合を変えて同時注入が自在にできることなどにより,検査の質の向上に大きく貢献している。例えば,単純撮影後に鎖骨上窩や肺尖部に病変が確認された場合,注入法の工夫や生理食塩水による後押しでアーチファクト低減を図ったり,造影剤濃度を下げても注入レートを確保できる。そのため,患者負担や検査への悪影響を避けられ,大学病院に求められる検査の質の担保に寄与している。
●経済性
患者の体型や検査内容に合わせた造影剤使用量や注入割合の調整が可能で,業務終了時の造影剤や生理食塩水の廃棄量も削減できる。また,廃棄コストが最もかさむ感染性医療廃棄物の大幅な削減が図れる点もメリットである。Centargoは感染性医療廃棄物(患者ラインなど)と一般の不燃ゴミ(バイアル,デイセットなど)が完全に分離できるため,当院ではCentargo導入前に比べて10%以上,2台体制後は20%以上の大幅な削減ができている。
●効率化・負担軽減
Centargo導入後は,大容量の生理食塩水バッグの使用により後押し用生理食塩水の準備が不要になるなど造影時の看護業務が格段に簡略化でき,看護師から技師へのタスクシフトが進んだことで,看護師からも好評を得ている。看護師の人員不足による接続待ち時間が短縮されるなどスループットも向上し,病院経営やコストパフォーマンスの向上に貢献している。
●安全性
Centargoは1種類の造影剤のみセット可能な仕様であり,それが造影剤種別の取り違えの抑制につながっている。また,2か所のエアセンサでのエア混入の抑制やPACSへの注入履歴の転送による詳細な造影履歴の管理,線量管理システム「Radimetrics」(バイエル薬品)との連携によるデータ利活用などが可能である。
さらに,静脈路確保が難しい患者への生理食塩水テストインジェクションにより,静脈路の安全性が確認できる。また,同時注入による造影剤濃度のフレキシブル化が副作用低減をもたらす可能性も示唆されており,医療安全への貢献の可能性も期待される。
●患者へのメリット
造影剤,生理食塩水ともに使用量のみの保険請求となるため,患者の経済的負担の軽減,ひいては医療財政への貢献につながる。また,造影剤と生理食塩水の同時注入の比率を調整し,造影剤を低濃度化することで,検査の質を担保しつつ嘔気や熱感などの改善につながる可能性も示唆されている。さらに,生理食塩水テストインジェクションによる静脈路の安全性の最終確認,エア混入や感染リスクの低減など,優しく安全な検査の提供につながっている。
Centargo導入がもたらしたもの
当院では入院検査が約30%を占めており,厳しい条件下となる重症患者でも精度の高い造影検査が要求されるが,Centargoは注入法の自由度が高く,検査の質の向上に貢献している。また,検査の準備・片付けなどの業務量は増加傾向にあるものの,タスク・シフト/シェアへの技師の参画が進められた点や,大学病院の使命でもある研究用データの蓄積などのメリットが挙げられる。
加えて,特に2台目の導入以降,若手技師を中心に検査コストの低減にかかわる意識の向上が感じられる(図3)。例えば,シリンジ製剤は感染性医療廃棄物(シリンジ)とより処理コストの低い医療ゴミ(プランジャー)に分別し,徹底的な廃棄物の分別・管理を行っている。また,リーダーとなる技師の采配の下,検査終了時の造影剤廃棄量をできるだけ少なくするよう,若手技師が検査室の振り分けを積極的に行うようになるなど,チームビルディングにも貢献していると感じている。
今後は,デイセットや患者ラインなどの消耗品の価格低減や大容量バイアル製剤の発売などのほか,MWM(modality worklist management)制御の汎用化などに期待したい。

図3 Centargoがもたらしたもの
Green radiologyの潮流とCentargoへの期待
近年,欧州を中心に「Green radiology」が提唱されている。画像診断は正確な診断と治療に不可欠である半面,MRIやCTなどの機器に対する膨大なエネルギー需要,使い捨て材料による大量の廃棄物や放射性医薬品の廃棄などにより,放射線医学は医療の二酸化炭素排出量に大きな影響を及ぼしている。特に廃棄物については,コスト面のみならず廃棄量自体の削減も考慮すべきであり,その観点からもCentargoは時流に沿った装置と言える。
また,当院の損益シミュレーションでは,CT造影検査に占める外来比率が低く精査比率が高ければ,入院患者専用として運用している施設でも持ち出しの軽減になると考えられる。さらに,造影検査では造影剤使用加算(500点)が算定されているが,将来的には個々の患者に応じたPrecision Medicineが可能でかつ経済性にも優れたインジェクタを使用する検査に関しては,例えば「造影剤使用最適化加算」などの新設により,結果的に医療財政に貢献できる可能性があると考えている。
まとめ
現在,画像診断領域では上記のようなさまざまな課題がある。Centargoは,運用次第でこれらの課題を改善できるポテンシャルを具備していると考えている。
管理医療機器:多相電動式造影剤注入装置
販売名:Centargo CTインジェクションシステム
認証番号:302 AABZX 00091000
製造販売元:バイエル薬品株式会社
管理医療機器:造影剤用輸液セット
販売名:Centargo ディスポーザブルセット
認証番号:303 AABZX 00003000
製造販売元:バイエル薬品株式会社
PP-M-CEN-JP-0402-16-06
問い合わせ先
バイエル薬品株式会社 ラジオロジー事業部
TEL:0120-609-040
https://radiology.bayer.jp/