Canon Clinical Report(キヤノンメディカルシステムズ)
2016年12月号
新世代ADCTのAquilion ONE / GENESIS Editionで最先端を追究した循環器医療を展開〜冠動脈サブトラクション、FFRCTなどを駆使して外来でのCTによる心臓のワンストップ検査を提供〜
華岡青洲記念心臓血管クリニック
2016年8月に札幌市豊平区にオープンした医療法人春林会華岡青洲記念心臓血管クリニックは、循環器専門の有床診療所(19床)である。最新の医療技術で低侵襲かつ精度の高い治療の提供をめざす同院では、東芝メディカルシステムズの新しいArea Detector CT「Aquilion ONE / GENESIS Edition」を導入、冠動脈サブトラクションやFFRCTを含めて外来での迅速診断の体制を整えている。同院での循環器疾患に対する診療について、CTの運用を中心に華岡慶一理事長・院長と山口隆義理事・診療技術部長に取材した。
華岡青洲の精神を受け継ぐ専門クリニック
華岡青洲記念心臓血管クリニックは、独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)北海道病院の心臓血管センター長兼心臓内科部長を務めていた華岡(旧姓・五十嵐)慶一理事長が独立して開業した心臓血管の専門クリニックである。華岡理事長は、「われわれがこれまで行ってきた最高水準の循環器医療を、より患者さんに近い場所で、より負担の少ない方法で提供することが目的です」と開設のねらいを語る。
華岡青洲は、江戸時代に世界で初めて全身麻酔による手術を行った医師で、有吉佐和子の小説『華岡青洲の妻』として広く知られている。華岡理事長の夫人が直系の子孫に当たり、今回の開業では華岡家の希望もありクリニック名に“華岡青洲”の名前を冠することになった。クリニックの理念は、“誠実な実践”“合理的考察”“先進の追究”“調和と共生”だが、華岡理事長はクリニックのめざすところを次のように説明する。
「華岡青洲は、『活物窮理(かつぶつきゅうり)』という理念を掲げて医療を行いました。それを現代の医療に合わせたのが4つの理念です。“誠実な実践”とは、合理的にものを考えること(合理的考察)です。しかし、“合理”は時代とともに常に変わるもので、経験に固執せず常に先進を追究し、新しいものを恐れずに取り入れる感覚が重要だと考えます。と同時に、医療機関が単独で成り立つ時代ではなく、地域の中での調和と共生を図ることも大切であり、地域との連携も実践していきます」
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最高クラスの機器でエビデンスに基づいた最新の医療を提供
同クリニックでは、最新の血管撮影装置を導入した2つの血管カテーテル室のほか、画像診断機器として320列ADCT、循環器用超音波診断装置3台など、それぞれのモダリティの中で最高クラスの装置を選択して導入している。そのねらいを華岡理事長は、「現代において求められているのは、明確なエビデンスに基づいた等質な医療の提供です。一個人の特別な資質や技量ではなく、定量的な情報をベースにした誰が行っても再現可能な医療の提供が重要です。循環器領域で言えば、心臓血管の内腔や血流を画像化あるいは解析するイメージングの役割が重要であり、それを可能にする機器については妥協なく最高クラスの製品を導入しました」と説明する。さらに、華岡理事長は、「クリニックの心臓部とも言える画像診断に関しては、JCHO北海道病院で一緒に働いていた山口部長を診療技術部の責任者として迎え、高度な診療を支える体制を整えています」と述べる。
山口部長は、循環器領域の画像検査を専門として、マルチスライスCTやADCTでの心臓検査の新しい撮影法やプロトコールの開発に取り組んできた。なかでも山口部長が開発した“test bolus tracking(TBT)法”は、多列CT時代の新しい造影法として評価され、多くの施設に広がっている。新しいクリニックのスタートについて山口部長は、「華岡理事長が心臓専門クリニックを開業するということで、これまで行ってきた高いレベルで診断や治療支援に役立つ心臓CT検査を、さらに特化した形で地域の中で提供したいと考えています」と述べる。
画像診断の核としてAquilion ONE / GENESIS Editionを導入
同クリニックでは、心臓CTとして東芝メディカルシステムズの新世代ADCTであるAquilion ONE / GENESIS Edition(以下、GENESIS)を導入した。山口部長はGENESIS導入について、「われわれはJCHO北海道病院で320列ADCT(Aquilion ONE / ViSION Edition)を用いて、冠動脈造影からサブトラクションCTAなど最先端の検査を行ってきました。クリニックではありますが、心臓を専門に扱う施設として、患者さんに対して最高レベルの検査を提供したいと考えて、最新のADCTであるGENESISを導入しました」と述べる。
GENESISの心臓撮影におけるアドバンテージについて山口部長は、「64列の心臓CTでは、心拍数による検査の制限や石灰化などのアーチファクトの影響で、仕方なくカテーテル検査に回るケースがありました。ADCTでは、心臓全体を1回のスキャンでカバーでき、検査の制限や画質の問題はクリアできました。さらにGENESISでは、撮影時間の短縮によって低被ばくで少ない造影剤量での検査が可能になっています」と述べる。
GENESISでは、新設計のpureViSION Opticsによって検出器全体の最適化を行い、さらなる被ばく低減と画質の向上を図っている。山口部長の検証では、GENESISではViSIONに比べて、1/2〜2/3の線量での撮影が可能になっている。
サブトラクションCTやFFRCTを含めたワンストップ検査を展開
同クリニックでは、心臓検査に関しては、外来でCTも含め心電図や各種の生理検査を行って、当日に結果を説明する体制をとっている。心臓CTは、サブトラクションCTAを含めた冠動脈撮影と、血管系のスクリーニングを行う。山口部長は、「冠動脈疾患の不安を抱える患者さんに対して、できるだけ早く結果をお知らせすると同時に、CTのみで診断から治療支援まで可能な情報を提供することを心掛けています」と語る。GENESISの検査件数は心臓検査のみで多い日で1日15件程度となっている。
冠動脈のサブトラクションCTAは、造影前後のCT画像を差分することで、従来難しかった石灰化部分の血管内腔の評価が可能になる。サブトラクションCTAの撮影では、精度の高いデータ取得のため、TBT法をADCTに最適化したプロトコールを構築して、短時間の息止めで失敗の少ない検査を実現している。山口部長は、「GENESISでは、1回13秒の息止め時間で非造影相と造影相の撮影が可能です。さらに呼気で息止めを行うことで心拍の安定したデータが得られます」と説明する。
さらに、機能的血流予備能比(FFR)をCTデータから解析して算出する“FFRCT”についても準備中で、東芝メディカルシステムズのワークステーション「Vitrea」のアプリケーションである“FFRCT”を利用して、2017年1月から外来でスタートする予定だ。さらに次のステップとして、心筋パーフュージョン検査まで視野に入れている。山口部長はGENESISでの心臓検査について、「TBT法を含めてADCTの能力を最大限に利用して“ワンストップショップ”の検査を提供したいと考えています。その中でもGENESISの低被ばく撮影はさらに威力を発揮すると思います」と述べる。
■Aquilion ONE / GENESIS Editionによる冠動脈撮影
GENESISを活用し非侵襲で最善の医療を提供
華岡理事長はGENESISについて、「これまでCTでは不可とされていた石灰化病変なども、サブトラクションCTAで外来での診断が可能になりました。さらに、FFRCTでの機能診断を加えることで、治療に直結する情報を迅速に把握できます。これは、病気に苦しむ患者さんに対して、できるだけ少ない負担で最善の治療を行うという、華岡青洲の精神を受け継いだ当クリニックにおいて、その医療を現在の技術で可能にする方法の一つといってよいでしょう」と語る。
山口部長はGENESISを中心とした今後の方向性について、「機械に使われるのではなく、機能や特長を生かして使い込んでいきたいと思っています。当クリニックの循環器内科医の先生方とは、治験や解析にも対応する“ラボ”をめざしたいという話をしていますし、将来的には、施設内にとどまらず、外部の診療放射線技師の方々が研究や実験で利用できるような環境を作っていきたいと考えています」と述べる。
自ら開発した麻酔薬の製法を公開した華岡青洲の下には、多くの弟子が集まり巣立っていったという。心臓CTの最新の検査法や造影手法がGENESISによってさらに磨かれ、広がることが期待される。
(2016年10月25日取材)
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医療法人春林会 華岡青洲記念 心臓血管クリニック 札幌市豊平区美園3条5-3-1 TEL 011-350-5858 http://hanaokaseishu.com/ |
Aquilion ONE / GENESIS Edition(Overview)
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