Canon Clinical Report(キヤノンメディカルシステムズ)
2023年6月号
X線透視を究める─内視鏡医の視点
X線透視下内視鏡検査編:慶應義塾大学病院 CアームX線TVシステムを壁面に設置してスペースを生み出しスタッフの動線確保やモダリティの効率的な運用を可能にした内視鏡室を実現
慶應義塾大学病院では2020年の1月と6月,内視鏡検査室2部屋にキヤノンメディカルシステムズのCアームX線TVシステム「Ultimax-i」を2台導入。消化器内科胆膵グループでは,内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)などに用いており,高画質や被ばく低減技術に加え,Cアームによる取り回しの良さ,コンパクトな設置面積が,ハイボリュームセンターに恩恵をもたらしている。胆膵班責任者である専任講師の岩崎栄典氏に,消化器内科医が重視する検査環境について取材した。
Outline
胆膵グループだけでがんをはじめ良性疾患など年間約1600件の内視鏡検査を施行
消化器内科では,内視鏡検査を年間で2万2000件程度行っており,このうち胆膵グループは,ERCPなどの検査を約1600件施行しているハイボリュームセンターだ。扱う疾患はがんに限らず,良性疾患も多く,4名の専門医と大学院生の医師らがチームとなり検査を担当している。
X線TVは間に操作室を挟んで内視鏡室2部屋に設置。消化器内科は週2日水曜日と金曜日をメインに使用し,そのほかの日は小児外科,小児科,呼吸器内科など,多数の診療科が検査を行っている。ERCPなどの検査は,通常,内視鏡操作,助手(指導医)の2名の医師と,電子カルテに記録する看護師,操作室で透視・撮影などの操作を行う診療放射線技師の4名体制で行われる。ただし,夜間の緊急検査などは医師2名と看護師1名で行うこともあり,その場合はX線TVのフットスイッチで透視・撮影の操作をしている。
検査枠は1時間を設定しており,検査室2部屋で並行して行われている。すべての検査と処置に指導医を配置して,万全の状況で処置を行っている。1回の検査で透視は5〜10分程度,撮影は病変部検出時やデバイス挿入後に10枚程度を取得。可能なかぎり被ばくを抑え,高精度な検査を施行している。
Professional’s eye
広いスペースを確保し質の高い検査を究める 岩崎栄典氏の視点
手技を究める
壁沿いにX線TVを配置し広いスペースを確保
内視鏡室の設計に際しては,札幌市の手稲渓仁会病院を見学し,参考にしています。操作室の両側に内視鏡室を設けることで,指導医が両方の部屋で行われる検査を管理,サポートしやすくしています。内視鏡室内には,X線TVと内視鏡以外に,生体情報モニター,超音波内視鏡(EUS),内視鏡的乳頭切開術(EST)用ナイフなど多数の装置・デバイスを保管するためのスペースや,被検者の搬出入を安全に行うための通路も確保しなければなりません。また,内視鏡の位置を移動する場所,教育機関であるため学生の見学する場所も確保する必要があります。Ultimax-iはコンパクトな設計でワーキングスペースを広くとれるほか,壁面に沿って設置できるため,無駄のない効率的なレイアウトが可能です。
加えて,Ultimax-iはCアームであるため,肝内胆管の評価に有用です。角度を変えて透視を行うことで,肝内胆管の走行の視認性を確保できます。例えば,肝門部胆管がんの場合,被検者を伏臥位にしてCアームの角度を変えながら透視・撮影を行うことで,処置などの精度が向上します。
高画質を究める
新画像処理条件により視認性を向上
ERCPでは,透視を行いながら胆管・膵管の壁に病変がないかを観察し,病変が疑われる部位,炎症を起こしている部位の撮影を行います。特に,原発性硬化性胆管炎(PSC)では診断がつきにくいため,X線TVシステムの透視像・撮影像が高画質であることが重要です。Ultimax-iは,高画質を特長としており,画質を維持しつつ,低被ばくかつ安全に手技を進めることができます。
さらに,新しい画像処理条件を使用することで,コントラストが向上しました。新しい画像処理条件は,造影剤の陰影を描出しなから,デバイスの位置が明瞭に描出され,難易度の高い検査・治療を行う際に威力を発揮しています。また,体格の大きな被検者での描出能も従来の画像処理条件の画像から改善しています。造影剤を使用している時にデバイスを操作しても,デバイスの位置や造影剤の陰影を確認しながら安全かつ高精度に操作できます。特に,EST用ナイフ「クレバーカット」(オリンパス製)や細径ガイドワイヤ「ナビプロ」(ボストン・サイエンティフィック製)は視認性が低かったのですが,新しい画像処理条件を適用することで見やすくなりました。
被ばく低減を究める
低レートのパルス透視,Lowモードを多用して被ばくを低減
Ultimax-iでは,Cアームの角度を変えることにより最適な透視像が得られるため,体位変換させた被検者の姿勢を維持するためのサポートも不要になり,スタッフの被ばくを減らすことができるようになりました。また,通常の線量は従来比65%線量低減の「octave SP」によりもともと低いのですが,さらに検査では低レートのパルス透視で,線量もLowモードを使用しています。被ばく線量を抑えつつ,高画質を得られる点を非常に評価しています。
一般的名称:据置型デジタル式汎用X線透視診断装置
販売名:多目的デジタルX線TVシステム Ultimax-i DREX-UI80
認証番号:221ACBZX00010000
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