Canon Clinical Report(キヤノンメディカルシステムズ)

2024年9月号

整形外科の専門クリニックに超音波、MRIを導入して高精細画像を生かした診療を展開 〜「足の外科」を中心に的確な診断から治療まで専門的な診療の提供で患者の痛みに向き合う〜

岡田整形外科

岡田整形外科

 

JR新潟駅の南、車で5分ほどの市街地にある岡田整形外科は、2023年11月に新築移転した。院長の岡田洋和氏は、新潟県では数少ない足の外科を専門とする整形外科医である。同院では、キヤノンメディカルシステムズの超音波診断装置「Aplio i700 / Prism Edition」、1.5T DLR(Deep Learning Reconstruction)-MRI「Vantage Gracian」を導入して、高精細画像を診断や治療に生かした整形外科診療を提供している。足の外科を中心に患者の痛みに対して、ていねいな診察と的確な診断、治療、リハビリテーションまでを提供する整形外科専門クリニックでの画像を活用した診療の現況を取材した。

岡田洋和 院長

岡田洋和 院長

 

超音波やMRIを活用した整形外科をめざし新築移転

同院は、1978年に先代の岡田 靖氏が開院。2017年に岡田洋和院長が継承し、2023年11月に旧医院から500mほど離れた現在地に新築移転した。岡田院長は、「旧医院は鉄筋2階建てで地域の患者さんにも親しまれたモダンな建物でしたが、40年以上が経過してバリアフリーや感染対策、電子カルテなどの電子化への対応など、ハード面で限界がありました。また、おかげさまで患者数が増えて、待合室や駐車場が手狭になっていたこともあって、新築移転することにしました」と話す。新しいクリニックでは、玄関や受付、待合室にも広いスペースを設けたほか、超音波診断装置や1.5T MRIなど最新の画像診断機器を導入、リハビリテーション室も充実させた。そのねらいを岡田院長は、「X線画像で骨には異常がありませんねと言って投薬や湿布を出す旧来の診療ではなく、超音波やMRIなどを駆使して痛みの原因を探し出し、運動療法や治療機器も使って治す最新の整形外科診療を提供できる環境をめざして機器や設備を整えました」と話す。
岡田院長は、2000年に聖マリアンナ医科大学卒業、足の外科を専門として2013年からは新潟中央病院整形外科にも勤務した。足の外科は、足部・足関節を対象に捻挫など外傷に伴う骨折や筋損傷、足底腱膜炎や外反母趾などを扱う。同院では整形外科クリニックとして、肩痛、膝痛、腰痛など幅広い疾患を診るが、新潟県には足の外科を専門とする整形外科医が少ないこともあって、紹介患者や県外からの受診も多く、足の患者が3割を占める。岡田院長は、「特に足の外科に関しては、大きな病院にも引けを取らない最先端の画像診断機器をそろえ、専門的な診療に誰でもオープンにアクセスできるようにしたいというのが当院の理念です」と述べる。手術が必要な場合には、現在も非常勤で週1回外来を行っている新潟中央病院で院長自ら手術も行う。スタッフは、医師は岡田院長のほか非常勤医師2名、看護師4名、診療放射線技師1名、理学療法士(PT)6名、リハビリ助手2名、事務スタッフ6名。外来はリハビリを含めて1日平均200人近くに上る。

高画質とSMIなどのアプリを評価してAplio i700を導入

同院の画像診断機器は、超音波、MRIのほかにもX線撮影装置などキヤノンメディカルシステムズの製品が多く導入されている。岡田院長は機器選定について、「一番は人の縁が大きな理由です。超音波やMRIの選定では、面谷 透先生が開業された東京先進整形外科で超音波やMRIを使った診療を見学して、運用や画質、必要性を実感できたのも大きかったですね。超音波に関しては、旧医院の時から他社の装置を使って診療していましたが、Aplio i700の画質を評価して選定しました」と述べる。
Aplio i700は、高性能ハードウエアや信号処理アーキテクチャによってビーム送受信の精度を向上、さらに「iBeam+」によって広視野角の検査やフルフォーカスなど多彩なBモード画像を実現するほか、Superb Microvascular Imaging(SMI)などさまざまなアプリケーションを利用できる。岡田院長はAplio i700について、「基本となる画質が良いこと、さらに浅部だけでなく深部までフォーカスが当たってクリアに描出されます。超音波は描出される画像がすべてですので、Aplio i700の高い画質には助かっています」と評価する。
Aplio i700は診察室に設置されており、診察の際には超音波を使って診療を行っている。整形外科での超音波の有用性について岡田院長は、「超音波では、X線では見えない筋肉や靭帯、腱などを観察でき、痛みの原因をその場で把握することができます。また、画像があることで患者さんへの説得力が向上します。足底腱膜炎で、実際に自分の足底腱膜が腫れている様子を示して説明された方が、理解は格段に高まります。ダイレクトに画像を見せることによって患者さんのアドヒアランスが向上することを実感しています」と説明する。プローブは18MHzと24MHzの高周波リニアプローブを使用している。岡田院長は、「18MHzをメインに使っていますが、深いところまでクリアに見えます。24MHzは、手指や足の指先といったごく浅いところを見るのに使っています」と述べる。

足部・足関節などの詳細な観察や超音波ガイド下穿刺に活用

足部・足関節の治療は、湿布や痛み止めだけで終わってしまう場合が少なくない。同院には湿布や痛み止めだけで治らずに難治化して来院する患者も多いという。岡田院長は、「超音波の画像を基に病態を把握して、その患者さんに合った治療を行うことが必要です。当院では、痛みの原因、治療方針まで患者さんにしっかりと説明して、リハビリなど保存療法を行っています」と言う。そのほか、超音波では、肋骨骨折、関節部の靭帯損傷や剥離骨折、小児の裂離骨折などがとらえられる。岡田院長は、「足のような細かい骨が多い部位の剥離骨折は、X線では描出されないことがありますが、体表に近いので超音波で拾い上げることができます。骨折部位が明確になれば適切な保存療法が可能です」と説明する。
膝の関節穿刺や肩関節などのハイドロリリース(生理食塩水の注射)など超音波ガイド下の穿刺も日常的に行っている。岡田院長は、「ブラインドでやるよりも、超音波ガイド下では安全で確実に手技が進められます。診察室でも日常的に穿刺は行っていますが、リハビリ室でもPTからの要請で徒手では取れない痛みに対して穿刺を行うこともあります」と言う。同院ではリバビリ室のPTも超音波を診療に積極的に取り入れている。
SMIは、微細な低流速領域の血流を検出するキヤノンメディカルシステムズ独自の画像技術で、炎症などの部位での血流を確認できる。岡田院長は、「腱や靭帯の損傷で炎症がある場合には、SMIを使います。痛みが残っている足関節の捻挫などで、SMIで血流が確認できれば痛みの原因が炎症であることがわかります。そのほかリウマチの早期発見や痛風などの診断に有効です」と言う。

■Aplio i700 による「足の外科」の臨床画像

図1 足底腱膜炎の診断 上:正常例 下:足底腱膜の肥厚

図1 足底腱膜炎の診断
上:正常例 下:足底腱膜の肥厚

 

図2 SMIによる微細血流の描出 上:正常例 下:前距腓靭帯損傷

図2 SMIによる微細血流の描出
上:正常例 下:前距腓靭帯損傷

 

図3 腓腹筋損傷 上:正常例 下:損傷例

図3 腓腹筋損傷
上:正常例 下:損傷例

 

DLRとBone Imageを評価してVantage Gracianを導入

Vantage Gracianは、DLR技術を搭載し高画質と高速撮像の両立が可能なMRIだ。Vantage Gracianについて岡田院長は、「東京先進整形外科でBone Imageを見て、CTに匹敵するような骨の描出に感銘を受けて選定しました。画質に関しては、これまで病院で見てきたMRIと遜色ない画像が得られています」と述べる。
MRIは1日6〜8件を撮像しているが、岡田院長はMRI検査の適用について、「超音波にも弱点があるので、そういった疾患はMRIを撮るようにしています。例えば、脊柱管狭窄症などは超音波では狭窄なのかヘルニアなのかの診断は難しいです。また、膝の半月板損傷や大腿骨内顆骨壊死など不顕性骨折は超音波ではわからないことが多いです。MRIでは高信号で描出されて、長引く痛みの原因がわかることが多いですね」と説明する。そのほか若年者のスポーツによる疲労骨折、高齢者の脆弱性骨折などもMRIで診断している。整形外科専門クリニックでのMRIの活用については、「クリニックでMRIを導入するのはハードルが高いですが、X線ではわからない骨折や炎症が描出されるので有用性は高いです。特に自分の専門でない領域では、画像で診断できるメリットは大きいと感じています。手術適応の見極めができるのもMRIのメリットです」とのことだ。

1.5T DLR-MRI「Vantage Gracian」を脊椎疾患や不顕性骨折などの診断に活用

1.5T DLR-MRI「Vantage Gracian」を脊椎疾患や不顕性骨折などの診断に活用

 

装置や施設など充実した設備を生かして地域に貢献

岡田院長は超音波の活用について、「若い医師やPTには、超音波を積極的に活用してほしいですね。超音波は、X線のように被ばくもなく、MRIのように手間もかからないので、気軽に使うことができます。それがさまざまな疾患や病態に接することになり、超音波を当てることで患者さんにも触れることになるので、自分にとっても得るものは大きいと思います」と話す。クリニックのこれからについては、「機能としてはちょっとした病院クラスのものがそろいましたので、これを活用して来院される患者さんに良い診療を提供して還元していきたいですね」と述べる。
最新の超音波やMRIを活用した整形外科診療が、新潟の地でさらに大きくその芽を伸ばしていくことを期待したい。

(2024年7月26日取材)

一般的名称:汎用超音波画像診断装置
販売名:超音波診断装置 Aplio i700 TUS-AI700
認証番号:228ABBZX00022000

一般的名称:超電導磁石式全身用MR装置
販売名:MR装置 Vantage Elan MRT-2020
認証番号:225ADBZX00170000
類型:Vantage Gracian

※本記事におけるDLRという記載は、設計段階でDeep Learning技術を用いたことであり、お客様の検査・診断において自己学習する技術ではありません。

*記事内容はご経験や知見による、ご本人のご意見や感想が含まれる場合があります。

 

医療法人社団 岡田整形外科

医療法人社団
岡田整形外科
新潟県新潟市中央区天神尾2-11-2
TEL 025-241-8608
https://okadaseikei.jp

 

  モダリティEXPO Aplio i700 / Prism Edition

 

  モダリティEXPO Vantage Gracian

 

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