Canon Clinical Report(キヤノンメディカルシステムズ)

2025年7月号

MRIやCTなど画像診断装置を完備して即日検査を提供し身近な脳神経外科診療を展開 〜トータル提案により充実した検査環境での開業を実現、AiCEが診療をサポート〜

府中の森 脳神経外科・内科

府中の森 脳神経外科・内科

 

府中の森 脳神経外科・内科は、脳神経外科専門クリニックとして府中市東部の緑の多い住宅街に2024年9月に開院した。開院に当たっては、画像診断装置についてキヤノンメディカルシステムズからトータルでの提案・サポートを受け、1.5T DLR(Deep Learning Reconstruction)- MRI「Vantage Gracian」と16列CT「Aquilion Start / i Edition」、一般X線撮影システム、デジタルラジオグラフィ(DR)を“オールキヤノン”で導入し、受診当日に必要な検査を提供できる環境を整えた。クリニック開院の経緯やねらい、画像診断装置導入のコンセプト、AI技術を活用した画像再構成技術を実装したMRI、CTの診療への寄与について、佐藤淳一院長と診療放射線技師の石井 亮氏に取材した。

佐藤淳一 院長

佐藤淳一 院長

石井 亮 技師

石井 亮 技師

 

画像診断装置を完備した脳神経外科専門クリニックを開業

佐藤院長は長年、東北や都内の病院で救急医療や脳神経外科手術を中心に診療に携わってきたが、医療技術の進化に伴い治療の低侵襲化が進んでいる流れを踏まえ、より患者に身近な環境でこれまでの経験を生かしたいと脳神経外科専門クリニックを開業した。クリニックにはMRIとCT、一般X線撮影システムを完備し、受診当日に詳細な検査を行える環境を整えた。佐藤院長は、「脳神経外科は画像診断とともに進化してきた領域であり、診療の質を担保するために画像診断装置は必須です。勤務医の頃とまったく環境を変えてしまうと、これまでの経験や自分の得意分野を生かすことができないため、MRIやCTなしでの開業は考えていませんでした。また、病院では検査待ちや、画像診断クリニックなど外部に検査を依頼することも多いですが、患者さんの不安をできるだけ早く解消し、より早期に治療につなげるためにも画像診断装置は必要です。受診当日に検査結果を伝えられる環境を整えることで、かかりつけ医として地域に安心していただける医療を提供することをめざしています」と話す。
クリニックの立地として車やタクシーで来院しやすい駐車場完備の現在地を選んだのも、頭痛やめまい、脳卒中による麻痺があっても受診しやすいようにと考えてのことだ。土日診療も行うなど、患者の利便性を重視した運営を行っており、現在は、脳神経領域の症状がある患者を中心に、風邪や腹痛といった一般的な内科も含めて、1日平均で約50人が受診する。

利便性やサポートへの期待から装置メーカーをキヤノンに統一

開業に向けて動き出した当初より、佐藤院長は画像診断装置についてはMRIを最優先に、一般X線撮影システム、そして内科も標榜することから可能であればCTも導入することを検討していた。また、複数の画像診断装置を導入するに当たっては、PACSや電子カルテとの連携、導入後のメンテナンスやサポートの利便性から1つのメーカーでまとめたいと考えていた。佐藤院長はオールキヤノンで装置をそろえる決断をした理由について、次のように述べる。
「MRIは1.5T装置を前提に、導入後の部品調達などのサポート体制も踏まえて国内メーカーを中心に検討しました。クリニックでMRIとCTを入れるとなるとリスクも大きいですが、キヤノンメディカルシステムズからは周辺の医療機関のMRI稼働状況調査といったサポートや、コストのシミュレーションを行った上でトータルでの提案をしてもらうことができ、MRIとCTの両方を導入できると判断しました」
開業準備の段階から、同じ病院で勤務したことをきっかけに付き合いのあった石井技師に声をかけており、装置選定も共に行った。佐藤院長、石井技師共に、これまでにキヤノンメディカルシステムズの装置を使用した経験から、同社への信頼感があり、また同社装置の普及率が高いことから非常勤で来てもらう技師も操作しやすいだろうという期待もあった。
また、ビルの1階にテナントとして入るため周辺への影響が懸念されたが、その点においてもキヤノンメディカルシステムズのサポートが得られた。佐藤院長は、「MRIの騒音やクエンチへの対策を強化してもらったほか、ほかのテナント向けに説明会を実施してもらうなど、開業に向けて尽力してもらいました」と振り返る。患者の快適性を向上させる静音化機構「Pianissimo Zen」も周囲への音漏れの抑制につながっている。

コンパクトなAquilion Start / i Editionを一般X線撮影システムと同室に設置

コンパクトなAquilion Start / i Editionを一般X線撮影システムと同室に設置

 

即日検査・診断を支えるAiCEによる短時間撮像

採用されたVantage Gracian とAquilion Start / i Editionは、共にディープラーニングを用いて設計した画像再構成技術「Advanced intelligent Clear-IQ Engine(AiCE)」(CTはAiCE-i)が搭載され、SNR向上の効果により、MRIにおいては撮像の高速化、CTにおいては低線量撮影などが可能となっている。佐藤院長は、オールキヤノンに決めた理由の一つにAiCEへの期待もあったと言い、「MRIの検査時間短縮は患者さんの負担軽減にもつながりますし、受診当日に検査・診断をするには検査のスループットが重要です。開院後は、実際に短時間撮像で検査を行っていますが、AiCEにより読影しやすい滑らかな画像が得られています」と話す。
MRI検査はフルスタディ〔MRA、拡散強調画像(DWI)、FLAIR、T1強調画像、T2強調画像、T2*強調画像〕を基本に、1検査15分で実施している。現在は1日に約20件のMRI検査を行っているが、30件までは対応できると見込んでいる。
画像検査を一手に担っている石井技師は、「MRIの検査からはしばらく離れていたので、操作にはブランクがありましたが、Vantage Gracianは操作性が直感的でわかりやすく、CTや一般撮影の検査をしながらでも問題なく対応できています」と述べる。また、断面の位置決めをサポートする「Auto Scan Assist」を活用しており、「頭部検査では基本的に使用していますが、真っ直ぐ正面を向くようにポジショニングできない患者さんでも、高い精度で位置決めが可能です」と評価している。
佐藤院長は、「短時間撮像により初診の患者さんも受付から1〜2時間で診療を終えることができ、即日検査・診断という目標を達成できています」と、めざしていた診療を提供できていると話す。

■オールキヤノンの画像診断装置による臨床画像

図1 Vantage Gracianによる頭部画像 a:DWI b:FLAIR c:T2WI d:3D MIP

図1 Vantage Gracianによる頭部画像
a:DWI b:FLAIR c:T2WI d:3D MIP

 

図2 Vantage Gracianによる頭部画像:脳動静脈奇形(AVM) a:3D MIP b:VR

図2 Vantage Gracianによる頭部画像:脳動静脈奇形(AVM)
a:3D MIP b:VR

 

図3 Aquilion Start / i Editionによる頭部画像 a:axial b:VR

図3 Aquilion Start / i Editionによる頭部画像
a:axial b:VR

 

MRIとCTを相補的に活用し必要な検査を適切に提供

一方、Aquilion Start / i Editionは、最小設置面積が9.8m2とコンパクト設計が特徴の装置で、同クリニックでは一般X線撮影システムと同室に設置し、スペースを効率的に活用している。外傷や内科の検査のほか、他院からの依頼検査にも対応し、1日平均10件ほどの検査を行っている。佐藤院長は、「CTは脳出血や頭部外傷だけでなく全身の検査が可能で、内科を標榜する上で胸部や腹部の検査ができる環境は安心できます。また、MRIはフォローアップで繰り返し検査するにはハードルが高く、閉所恐怖症の患者さんで検査ができないこともありますが、CTがあることでMRIと相補的に活用することができ、導入して良かったと実感しています」と話す。
石井技師は、「以前に行った各社CT装置の物理評価の経験から、キヤノンメディカルシステムズのCTが最も画質が優れているという認識がありました。ただ、ハイエンド装置と比べると管球のパワーに制限があり、体格や部位によっては十分な画像を得るのに苦労することもありますが、Aquilion Start / i EditionはAiCE-iで線量不足を補うことができるため助かっています」と述べる。頭部外傷や腹痛などで受診する小児も多いが、AiCE-iにより低線量撮影でも画質を担保できるため被ばく低減にも役立っている。

充実した検査環境が地域との信頼関係構築に貢献

開院から約9か月がたち、佐藤院長が当初想定していた高齢者だけでなく、全世代にわたって患者が来院するようになっている。佐藤院長は、「キヤノンメディカルシステムズの提案によりMRIとCTを完備した環境を構築でき、稼働後も必要に応じて迅速・適切にサポートしてもらっていることで、乳幼児から高齢者まで、患者さんに適した検査を即日提供することができており、満足しています。このような検査環境が患者さんの信頼にもつながっていると思いますので、今後はさらに装置のパフォーマンスを引き出し、診療の充実や患者さんの満足度向上につながるように活用していきたいです」と述べる。
かかりつけ医として地域住民の期待に応える診療を提供するため、オールキヤノンの画像診断装置が力になっていくだろう。

(2025年5月19日取材)

*本記事中のAIという表現は設計段階でAI技術を用いたことを意味しており、システム自体に自己学習機能は有していません。
*記事内容はご経験や知見による、ご本人のご意見や感想が含まれる場合があります。

一般的名称:超電導磁石式全身用MR装置
販売名:MR装置 Vantage Elan MRT-2020
認証番号:225ADBZX00170000
類型:Vantage Gracian

一般的名称:全身用X線CT診断装置
販売名:CTスキャナ Aquilion Start TSX-037A
認証番号:230ACBZX00022000

 

府中の森 脳神経外科・内科

府中の森 脳神経外科・内科
東京都府中市若松町4丁目6-1
アリエス若松町ビル1階
TEL 042-310-9200
https://fuchunomori-nscl.jp

 

   モダリティEXPO Vantage Gracian

 

   モダリティEXPO Aquilion Start / i Edition

 

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