セミナーレポート(キヤノンメディカルシステムズ)

2025年10月号

第109回日本消化器内視鏡学会総会ランチョンセミナー11 胆膵内視鏡診断・治療を究める

<講演2>胆膵内視鏡診断・治療を究める ~より安全・確実な治療を目指して~

今津 博雄(帝京大学医学部内科学講座)

今津 博雄(帝京大学医学部内科学講座)

帝京大学医学部附属病院の超音波内視鏡(EUS)/内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)関連手技件数は2024年度に飛躍的に増加し、2025年1月にキヤノンメディカルシステムズの最新のCアームX線TVシステム「Ultimax-i」を導入した。Ultimax-iはアンダーチューブ型Cアームと防護垂れ、画像処理技術で間接的に被ばくを低減し、同時に画像処理技術とCアームにより優れた描出能を実現する。本講演では、胆膵内視鏡治療で求められるX線TVシステムの機能・性能について、Ultimax-iを活用した治療例を踏まえて紹介する。

安全性と確実性に寄与するUltimax-i

胆膵内視鏡治療において、X線TVシステムに求められるのは安全性と確実性である。安全性は自由度の高いワークスペースや被ばく低減、確実性は優れた描出能(診断能)によって担保され、これらを両立した装置により初めて安全、確実な胆膵内視鏡治療が可能になる。
Ultimax-iは、装置設計やアンダーチューブ型Cアーム、画像処理技術によりこれらの課題を解決する。当施設では、動線確保のためにUltimax-iをX線TVシステム室の中央に設置しているが、コンパクト設計のため55インチの大画面モニタや内視鏡システム、EUSなどを設置しても術者・助手の十分なワークスペースが確保できている(図1)。
また、Ultimax-iは、DCF(デジタル補償フィルタ)をはじめとする8つの画像処理技術で構成される高画質・低線量検査コンセプト「octave SP」に、新画像処理条件「Accent」が加わった。octave SP搭載システムは、従来型と比較して線量を65%低減してもノイズが軽減し、高画質・低線量を実現している。さらに、Accentはボタン1つで簡単にオン・オフの切り替えが可能で、適用することでコントラストを改善してデバイスや造影剤を強調表示し、不透過マーカーなどがより鮮明となる。
これらの画像処理技術は、間接的に線量の抑制につながっている。当施設ではパルス透視は低フレームレート7.5fps、透視線量モードをLowモード(通常の35%線量)に設定しており(図2)、ERCP施行時の線量マップでは、大部分がJ-RIME(医療被ばく研究情報ネットワーク)のDRLs(診断参考レベル)内に収まるという結果になった(図3)。

図1 帝京大学医学部附属病院X線TVシステム室のレイアウト コンパクト設計の「Ultimax-i」により、広いワークスペースが確保できている。

図1 帝京大学医学部附属病院X線TVシステム室のレイアウト
コンパクト設計の「Ultimax-i」により、広いワークスペースが確保できている。

 

図2 帝京大学での線量率とパルスレート 9画像処理技術群(octave SP+Accent)により間接的に線量とパルスレートを抑えて、かつ確実性を担保する。

図2 帝京大学での線量率とパルスレート
9画像処理技術群(octave SP+Accent)により間接的に線量とパルスレートを抑えて、かつ確実性を担保する。

 

図3 帝京大学でのERCP時線量マップ J-RIME(医療被ばく研究情報ネットワーク)によるDRLs(診断参考レベル)との比較

図3 帝京大学でのERCP時線量マップ
J-RIME(医療被ばく研究情報ネットワーク)によるDRLs(診断参考レベル)との比較

 

Ultimax-iを活用した胆膵内視鏡治療の症例提示

●症例1:総胆管結石症例(図4)
本症例は、Roux-en-Y再建腸管に対し内視鏡的乳頭バルーン拡張術(EPBD)による総胆管結石治療を行った。Accent適用により、バルーンのノッチが非常に明瞭に確認できたほか(b)、Cアームを回転させることでバスケットとスコープのシャフト部の重なりを解消し、安全に除石が行えた(c)。

図4 症例1:総胆管結石症例(Accent適用+Cアーム)

図4 症例1:総胆管結石症例(Accent適用+Cアーム)

 

●症例2:膵がん症例(図5)
本症例は狭窄が胆囊管との分岐部近くまで及んでおり、胆囊炎予防のため内視鏡的胆囊ステント留置(EGBS)後にフルカバー金属ステントを留置した。Accentを適用して先端部を明瞭に描出(b)し、カバーステントが分岐部に掛からないよう留置を行った。

図5 症例2:膵がん症例(Accent適用)

図5 症例2:膵がん症例(Accent適用)

 

●症例3:膵鉤部がん症例(図6)
演者は、胆管カニュレーション困難例に、CアームやAccentが有用であると考えている。Accent適用によりあらかじめ乳頭内胆管の屈曲が確認できれば、スムーズにカニュレーションを行うことが可能になる(a)。本症例は、著明な圧排が加わっており、Accent適用によって乳頭内胆管の2か所での屈曲が確認された。CT画像では背側の乳頭内胆管の圧排も考えられたが、Cアームを回転させると厚みが消滅したため、第1屈曲部が腹側に屈曲していると考えられた(b)。第1屈曲部でカテーテル先端を腹側に向け、無事にガイドワイヤが通過した後、時計回りにトルクを加え深部挿管が成功した(c)。

図6 症例3:膵鉤部がん症例(Accent適用+Cアーム)

図6 症例3:膵鉤部がん症例(Accent適用+Cアーム)

 

●症例4:仮性囊胞症例(図7)
最後に、膵臓用瘻孔形成補綴材「Hot AXIOSシステム」(ボストン・サイエンティフィック ジャパン社製)を用いて超音波内視鏡下膵囊胞ドレナージ(EUS-CD)を行った症例を提示する。P-ring近傍の胃壁と癒着しており、スコープがプッシュ状態になった。リリース時にスコープを引っ張ると直線化し、金属部を挿入している軸と反対側に力が加わり、金属部が抜けてしまう場合があるが、Accentを適用し、金属部を確認しつつプッシュ状態のままスコープを時計回りに回転させ留置した。Hot AXIOSは透視下では視認が困難な場合があるが、Accent適用により明瞭に描出できた。

図7 症例4:仮性囊胞症例(Accent適用)

図7 症例4:仮性囊胞症例(Accent適用)

 

まとめ

より安全、確実な胆膵内視鏡治療をめざすには、診療体制や術者の技量・経験が重要だが、X線TVシステムもその一端を担っている。その中において、安全性、確実性を備えたUltimax-iは非常に有用である。

*記事内容はご経験や知見による、ご本人のご意見や感想が含まれる場合があります。

一般的名称:据置型デジタル式汎用X線透視診断装置
販売名: 多目的デジタルX線TVシステム Ultimax-i DREX-UI80
認証番号:221ACBZX00010000

 

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