GE Healthcare Japan Edison Seminar 2021
2022年1月号
GE Healthcare Japan Edison Seminar 2021 Series 2
【脳・脳血管内治療】GE MRI とともに目指す脳血管障害の新たな可能性
堀江 信貴[長崎大学 医学部 脳神経外科学 講師(現・広島大学大学院 医系科学研究科 脳神経外科 教授)]
本講演では,「MRIでここまで見える(Silent MRA)」と「MRIでここまでわかる(4D Flow)」をテーマに,GE社製MRI装置を用いた脳血管内治療について報告する。
低侵襲化が進む脳血管内治療
脳血管障害治療では,血管内治療がスタンダードとなりつつある。そのうち,フローダイバーター(FD)治療のフォローアップでは,動脈瘤内の血栓化の観察や,母血管の描出が重要である。現在,FD治療のフォローアップは頸動脈造影法(CAG)がゴールドスタンダードだが,われわれはMRIを用いた手法について検討を行っている。
MRIでここまで見える(Silent MRA)
頭部MRAでは通常,time of flight(TOF)法が行われる(TOF-MRA)。TOF-MRAは,信号抑制パルスを照射して静脈血の信号を抑え,動脈血流の画像のみを得る撮像法である。しかし,微細な血管や大動脈瘤などの流れが遅い血液,乱流(turbulent flow)などの描出は困難である。
一方,GE社の“SILENT SCAN(Silenz)”を使用するSilent MRAは,arterial spin labeling(ASL)法とゼロTEを組み合わせ,コントロール像からラベリングした画像をサブトラクションすることで,血管のみが抽出される。これにより,金属アーチファクトに強く,出血などT1WIで高信号のものはMIP像に影響しない。さらに,ラベル付けすることで,乱流や渦流,層流などによるアーチファクトを大幅に低減する。Silent MRAでは,TOF-MRAで不明瞭だったもやもや病の血管や中硬膜動脈(MMA)からのtrans-dural-anastosisが明瞭に描出される。
図1は,脳動静脈奇形(AVM)に対する血管塞栓術および摘出術の症例である。TOF-MRAでは出血部位にアーチファクトが生じているが,Silent MRAでは良好に描出できている。また,Silent MRAの画像をほかのシーケンス画像とフュージョンさせることで,術後に残存するAVMを可視化でき,摘出術の術前プランニングにも有用である。
FD症例に対しては,金属アーチファクトを低減することから,各ステント留置症例のフォローアップにも適している。さらに,TOF-MRAでは血栓のため母血管の描出が不明瞭だが,Silent MRAは血栓化した動脈瘤が見え,残留流量(residual flow)などもわかるのが利点である。
MRIでここまでわかる(4D Flow)
4D Flowは,phase contrast法により関心領域の流速を短時間で計測する手法で,ベクトル方向の三次元に時間を加えた4Dの形態情報と血流情報を同時に取得する。4D Flow自体は新しい技術ではないが,高速撮像が可能になり,実臨床に使用できるようになった。画像解析には専用ソフトウエアを必要とするが,造影剤を使用せずに血流やStream Line,Wall Shear Stress(WSS),Energy Lossなどのパラメータの評価が可能である。従来は主に心臓外科領域で行われてきたが,われわれは頭部領域への応用を試みており,FD留置例などの大動脈瘤症例時に行っている。
4D Flowで最も関心があるのは,FD留置直後の血栓化の予測の可能性である。術前後のStream Lineを見ると,瘤内への流入がまったく異なっていることがわかり,これをパラメータで予測できないかと考えている(図2)。また,ステント留置直後はEnergy Lossの低下が示されており,動脈瘤の血栓化について客観的な指標となりうると思われる。
ただし,どのパラメータが血栓化に関係するかを確定するのは困難である。例えば,proportional velocity-reduction ratio(PVRR)が低下すれば必ずしも血栓化するわけではなく,複数のパラメータを組み合わせる必要があると考えている。また,狭窄部でWSSの高値が見られるが,それが意味するところを検証するべく,症例を収集している。
まとめ
今後は,MRIの進歩に伴い,脳疾患がよりいっそう見えるようになり,病態の把握が容易になると考えられる。特に,3D ASLやSilent MRA,4D Flowは脳血管障害の評価モダリティとして有用であり,手術のみならず,術前後の評価においてもless invasiveな時代が到来したのではないかと考えている。
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