経営者のための医療ITセミナー(東京)/ 医療現場のワークフロー変革セミナー(大阪)

2018年12月号

医療現場のワークフロー変革セミナー(大阪)

読影効率向上の機能を有した最新PACS Viewer

服部 貴行(東京都保健医療公社 大久保病院放射線科医長)

服部 貴行(東京都保健医療公社 大久保病院放射線科医長)

当院では,2018年3月にPACSを更新し,「Centricity PACS」とViewerとして「Universal Viewer」を導入した。更新前のPACSは7年間運用してきたが,この間CTやMRIなどの撮影技術はさらに進歩しており,当院においてもCT検査は造影剤の急速注入での多時相撮影や多断面再構成処理が増え,MRI検査は撮像時間の短縮によるシーケンスの増加,ほかのモダリティ画像との比較読影を行う機会が多くなっている。このような状況の中,読影業務の効率化が重要であることから,Universal Viewerの導入に至った。本講演では,2D Viewerに求められる機能や,Universal Viewerの特徴と実際の画像表示レイアウトなどを紹介する。

2D Viewerに思うこと

近年,PACSは,クラウドやVNAなどの画像保管の技術が進んでいる一方,読影を行うための2D Viewerは,大きな進歩が見られず,ベンダー間でも機能に大きな違いがなかった。モダリティの進歩により,多種多様な撮影技術の提供や検査数の増加にもかかわらず,2D Viewerの機能は従来とあまり変わらず,読影業務のワークフローは効率化されていないのが現状である。
また,2D Viewerの操作系も課題を抱えている。ベンダーごとに操作系が異なるため,すぐに習熟するのが難しい。さらに,使いやすくするためには,マウスのクリックやキーボードのショートカットキーなど,ユーザー自身がカスタマイズする必要がある。2D Viewerには,マウスをほとんど動かさず,画面上のボタンを押す回数を少なくして,より楽に,簡便に,直感的に画像診断を行うための機能が必要であり,画像をモニタ上に展開した時点で迅速に読影業務を開始できることが理想である。読影効率を上げるためにも,マウスを操作せずにプロトコルごとに適切なレイアウトで表示され,ショートカットキーを多用しないで過去画像との比較を行えるといったブレイクスルーが,2D Viewerには求められていた。

Universal Viewerの機能

今回のPACS更新に当たり,当院では,このようなブレイクスルー機能に期待して,Universal Viewerを導入した。
Universal Viewerは,「学習し,進化する」Viewerである。画像診断医がシリーズやサムネイル,MPRなどの多断面再構成画像の配置を,自身が好みとする画像表示レイアウトに設定し「いいね」ボタンをクリックすると,以後,同様の検査内容があった場合に,自動的に同じ画像表示レイアウトが適用され,読影を行える(図1)。この独自機能である“Smart Reading Protocol(SRP)”により,画像診断医はストレスを感じることなく,読影業務に集中できる。
さらに,Universal Viewerには,画像診断医の読影作業の負担となっていた過去画像などとの自動位置合わせ・同期を行う“Image Registration”機能が搭載されている。例えば,過去のCT検査と今回のCT検査で患者のポジションが異なっていても,物体の形状を基に,自動的に位置合わせ・同期が可能である。これは,CT画像同士だけでなく,CTとMRIなど,異なるモダリティの画像にも対応しており,頭部CTと頭部MRI,腹部CTと肝臓MRIといった比較読影が容易に行える。

図1 SRPの設定方法

図1 SRPの設定方法

 

画像表示レイアウトの紹介─SRPの応用

SRPの画像表示レイアウトの学習機能や,Image Registrationの自動位置合わせ・同期機能を用いたストレスのないワークフローは他ベンダーの2D Viewerでは実現されておらず,われわれは,日常の読影業務でこれらの機能を活用して,効率化を図っている。
例えば,急性腹症の造影CT検査では,私の場合,画面の上部に横断像,下部に冠状断像を時相ごとに配置して,多時相で造影剤の染まりを確認しながら読影を行っていくが,SRPで最初にその設定をしておくことによって,次回の検査から自動的にその画像表示レイアウトで表示されるようになる(図2)。さらに,Image Registration機能では,今回検査の画像をページングして読影を進めていくと,過去検査の画像が自動的に同期・連動して比較読影を行える。
一方,1回の検査で複数のシーケンスを撮像するMRIの読影では,従来,検査によってはシーケンスの撮像順が変わり,読影時モニタ上に表示される画像の順番も異なってしまっていたが,SRPを用いることで画像診断医があらかじめ設定した画像表示レイアウトへ自動的に並べ替えることが可能である。例えば,前立腺のMRI検査では,通常の表示画面の設定を変え,上部に拡散強調画像,ADC,T2強調画像を,下部にT1強調画像,造影MR画像を配置するレイアウトにしている(図3)。撮像の順番に関係なく,画像診断医の好みに応じて最適なレイアウトを作成し,ワークフローの効率化に役立てている。

図2 SRPを用いた急性腹症の造影CT検査での画像表示レイアウト

図2 SRPを用いた急性腹症の造影CT検査での画像表示レイアウト

 

図3 SRPを用いた前立腺のMRI検査での画像表示レイアウト

図3 SRPを用いた前立腺のMRI検査での画像表示レイアウト

 

まとめ

従来,2D Viewerの機能は,ベンダー間で大きな違いがなく,操作系のカスタマイズによる読影効率の向上を図っていたが,十分な効果を得られていなかった。読影効率を向上させるためには,SRPのようなモダリティのプロトコルに応じて画像表示レイアウトを変更できる学習機能や,Image Registrationのように比較する画像との自動位置合わせ・同期が可能な機能が有用である。

TOP