技術解説(GEヘルスケア・ジャパン)
2023年3月号
Cardiac Imaging 2023 核医学装置技術のCutting edge
GE HealthCareの心臓専用半導体SPECT装置「MyoSPECT」技術紹介
三宅 泰士[GEヘルスケア・ジャパン(株)MICT部Region Product Marketing]
心臓核医学検査においては,個々の患者の体形や心臓の大きさによっては検査が困難であったり,時間を要したりすることが課題とされてきた。また,被ばく低減や撮像時間の短縮などの,患者負担を減らす取り組みも注目されているところである。本稿では,2022年4月に発売を開始した心臓専用半導体SPECT装置「MyoSPECT」(図1)について解説する。
■CZT Detector
検出器には半導体SPECTの先行機種である「Discovery NM 530c」と同様,テルル化亜鉛カドミウム(CZT)を使用している。本検出器は,入射したγ線を直接変換することで,従来のNaIクリスタルよりもエネルギー分解能を高めている(図2)。1つのモジュールは1辺4cmの正方形で,2.46mmのピクセルサイズであり,これが空間分解能となる。これらの技術により,99mTc,201Tl,123Iイメージングにおいて,従来は難しいとされてきた2核種同時検査を高画質で提供することが可能となった。
■Alcyone Technology
半導体(CZT)検出器と心臓にフォーカスしたコリメータの組み合わせによるGE独自の技術を「Alcyone Technology」と呼ぶ(図3)。MyoSPECTでは,19個の検出器モジュールを半リング状に配置し,そのすべてが同時にデータ収集を行うことで,ガントリを回転させることなく短時間撮像が可能となった(図4)。さらに,高時間分解能のデータ取得により,動的解析による冠血流予備能(CFR)や心筋血流量(MBF)の評価も実現している(図5)。
■Smart Positioning
心臓核医学において,患者の心臓には個々の最適なスキャン位置が存在する。「Smart Positioning」機能は,プロジェクションデータを用いて個々の患者を最適化された位置(FOVの中心)に自動で移動させる(図6)。また,安静時と負荷時検査間のポジショニングを記憶する「Learn Form」機能により,安静-負荷検査間の心臓の位置の調整を,最初のスキャン画像の輪郭との重ね合わせによって簡便に行うことが可能である(図7)。安静-負荷検査間で一貫した位置を確保することで,読影時にスライスを比較する際の不一致を最小限に抑えられる。
■Extended Field of View
マルチピンホールコリメータによる有効視野を拡大する「Extended Field of View」機能は,体格の大きな患者を撮像する際に使用される(図8,9)。入力プロジェクションの拡張を行い,その辺縁でカウント統計を改善し,extrapolation methodで統計的に最適化を行う。このように,コリメータによって絞られた特定の面の一部に入射したγ線だけでなく,検出器のほかの面に入射したγ線をraw dataと再構成処理を組み合わせて有効に活用している。
◎
以上,MyoSPECTの技術について紹介した。患者のポジショニングや放射性薬剤の投与量,撮像時間の最適化は,個別化医療への第一歩であり,本装置の技術はこれに寄与するものである。
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