技術解説(GEヘルスケア・ジャパン)

2025年4月号

Cardiac Imaging 2025

心機能評価における革新的なAIを用いて開発された機能「Caption Guidance(キャプションガイダンス)」の可能性

中村 隼也[GEヘルスケア・ジャパン(株)超音波本部Point of Care部]

超音波画像診断装置の使用環境は多様化しており,生理検査室のみならず救急,外来,整形外科領域など,さまざまな診断,治療におけるサポートツールとして活用されている。GE HealthCareは,迅速に最適画像が得られる取り組み(「cSoundイメージフォーマー」や「XDclear」技術)を進めてきた。ただ,超音波診断に対する課題として検者依存性が挙げられており,正確な診断を行うためには熟練度を要してきた。
今回,Point of Care領域に特化した製品として,AI技術を用いた開発を推進し,検者依存性の課題解決をめざして「Venueシリーズ」をさらに強化してリリースした。本稿では,この特長およびAIを用いて開発された機能について紹介する。

■Point of Care領域に重点をおいた製品Venue Familyの特長

GE HealthCare Japanでは,Point of Care超音波検査に重点をおいた超音波画像診断装置「Venue」(2017年〜),「Venue Go」(2019年〜),「Venue Fit」(2022年〜)を数多くの医療機関へ提供している(図1)。
これら3機種のVenue Familyの特長としては,以下の3点が挙げられる。まず1つに,Point of Care超音波検査では装置の移動が多く,その際にプローブケーブルの断線トラブルが数多く報告される。Venue Familyは,それを改善すべく,プローブホルダーがモニタ画面の上部に設置されており,プローブケーブルが床につきにくい設計となっている。最新バージョンのR5(Revision5)からワイヤレスプローブとして,「Vscan Air」が搭載可能となっており,よりフレキシブルにスキャンが可能となった。次に,3機種すべてにバッテリーを標準搭載しており,すぐに電源が確保できない場面や診察室間の移動の場面などで,電源を気にせず使用できる設計となっている。最後に,直感的な操作が可能なフルタッチスクリーンを採用しており,清掃も簡単に行うことができる。このような特長は,Point of Care超音波検査がよく行われている救急科,ICU,麻酔科,整形外科などの現場のニーズを装置に反映し,製品化したものである。

図1 Venue Family 左からVenue,Venue Go,Venue Fit

図1 Venue Family
左からVenue,Venue Go,Venue Fit

 

■Point of Care超音波検査のニーズに合わせてAIを用いて開発された機能

先に紹介したVenueおよびVenue Goは,主に救急科のニーズに合わせてAI技術を用いて開発した「Automated VTI」「Automated IVC」「Automated B-line」「Real-Time EF」の4つのAuto Toolを有している。それぞれ,プローブを患者に当て,指定のBモード画像を描出してAuto Toolのボタンを1つ押すだけで,リアルタイムに計測値を得られるアプリケーションである。
これら4つのAuto Toolは,特に救急科やICUなどの1分1秒を争う現場の要望から,RUSH(Rapid Ultrasound for Shock and Hypertension)プロトコールをサポートする目的で開発された。実際,患者のショックの状態を鑑別するためには,エコーの継続的なトレーニングや専門知識などが必要となり,時間もかかる。このような課題を支援するAuto Toolには,従来の計測方法より簡単に,素早く,正確に鑑別するサポートが期待されている。

■VenueおよびVenue Go搭載の4つのAuto Toolの紹介

Real-Time EFは,心尖部四腔断面のスキャン中に,リアルタイムで左室駆出率(EF)を自動計測する機能である。Automated VTIは,心尖部より左室流出路を描出し,ワンタッチで自動的に速度時間積分(VTI)を算出する。左室流出路径を入力すれば,心拍出量(CO)も簡便に算出可能である。また,VTIの経時的変化をグラフ表示することも可能である。Automated IVCは,ワンタッチで簡便に下大静脈(IVC)の呼吸性変動を計測する。自発呼吸,人工呼吸の切り替えも可能である。Automated B-lineは,リアルタイムでB-lineをハイライトし,カウントする。フリーズ後,スキャンした間に最もB-lineが出現したフレームを表示する機能である(図2)。

図2 4つのAuto Tool

図2 4つのAuto Tool

 

■麻酔科領域の要望に応えてAIで開発された新たな技術「cNerve」

2023年にリリースしたVenue Family R4(Revision4)から,新たにAI技術を用いて開発されたcNerveというアプリケーションが搭載可能となった。このcNerveは,神経と思われる部位を黄色く色付けし,穿刺手技を行う前段階で,対象となる神経を確認する際のサポート(参照表示)ツールである。対応するアプローチとしては,腕神経叢(斜角筋間アプローチ,鎖骨上アプローチ)と大腿神経,坐骨神経(膝窩アプローチ)の4つである。
使用方法としては,cNerveの中からBP(腕神経叢),Femoral(大腿神経),Sciatic(坐骨神経)の部位を選ぶと,リアルタイムのBモード画像を解析し,目的とする神経構造の候補を特定する。ほかにも,cNerve起動時にReference Imageを表示させることができ,プローブを当てた時の参照画像を確認することができる。このAuto Toolもあくまでサポートする機能であるため,適切に神経の確認ができるユーザーが使用し,神経の決定は,そのユーザーの判断によって行うことが前提となっている。また,穿刺手技を行っている間は使用不可となっている。先に紹介した4つのAuto Tool同様,このcNerveもPoint of Care超音波検査がよく行われる麻酔科の要望に応えて開発したアプリケーションである。

■革新的なAIを用いて開発された機能,「Caption Guidance(キャプションガイダンス)」のサポートで,心エコー検査の撮像自体をアシスト,高いクオリティの検査を補助

これまで紹介した5つのAI技術は,操作者の撮像した画像データをAIが解析し,その後の計測や診断,手技をサポートする機能であり,正しい断面で高いクオリティの画像が得られていることが前提となっている。しかし,特に心エコー検査をPoint of Careとして専門外の医療従事者が実施する場合,正確な撮像方法を習得すること自体が大きな課題の一つである。
今回,新たにAIを用いて開発されたCaption Guidanceは,心エコー検査において,AIがプローブ位置を含む撮像の状態を認識し,リアルタイムに操作者にガイダンスを行うことで,心エコーに慣れていない医療従事者でも高いクオリティの画像が安定して得られるよう撮像自体をサポートする機能である。そのため,医療従事者に対して検査,手技のワークフロー向上や初学者への教育をアシストするだけでなく,患者に対して高いクオリティの安定した心エコー検査を提供することを目的としたサポート機能であることが,従来のAI技術とは異なる点である。
Caption Guidanceでは,心エコー検査時に,操作者に対してリアルタイムでプローブ走査をガイド表示し,プローブを当てる位置,角度,マークの方向など,正確で高いクオリティの画像が得られるようにサポートする。これにより,複雑な心エコー検査をより簡便かつ正確に行うことが期待できる。また,最適なスキャン画像が得られているかの判断をアシストするインジケータ機能も備えており,スキャン画像が一定レベル以上のクオリティと認識された際に,操作者がプローブの位置を一定時間維持することで,自動的に画像を保存することも可能である(図3)。
従来型の心臓用セクタープローブに加え,ワイヤレスプローブでも活用できるため,特に心エコーの初学者への教育を行う大学・基幹病院のトレーニングセンターでの活用や,救急患者,集中治療室,周術期の入院患者に対する心エコー検査のアクセス拡大や,よりスムーズな心エコー検査の補助など,さまざまな用途での活用が期待される。

図3 Caption Guidance

図3 Caption Guidance

 

紹介した6つのAuto Toolを活用することにより,ビギナーからエキスパートまで,スキャン技術以外で生じる誤差の低減が期待される。さらに,ビギナー向けのトレーニングのツールとしても活用が期待され,エコーの画像描出の向上につながると考えられる。超音波画像診断装置のAuto Toolは拡張性もあり,今後,さらなる価値を提供するために,さまざまな領域で役に立つ開発が期待される。

*Caption Guidance使用時,診断に用いる画像の選択は使用者の判断により行う必要があります。
*Caption GuidanceはVenueおよびVenue Goのオプションです。

製造販売:GEヘルスケア・ジャパン株式会社
販売名称:汎用超音波画像診断装置 Venue
医療機器認証番号:229ABBZX00055000

販売名称:汎用超音波画像診断装置 Venue Go
医療機器認証番号: 301ACBZX00012000

販売名称:汎用超音波画像診断装置 Venue Fit
医療機器認証番号 303ACBZX00010000

販売名称:汎用超音波画像診断装置 Vscan Air
医療機器認証番号:303ACBZX00012000

*CLプローブは上記医療機器の類型です。
*SLプローブは上記医療機器の類型です。

 

●問い合わせ先
GEヘルスケア・ジャパン株式会社
〒191-8503
東京都日野市旭が丘4-7-127
TEL:0120-202-021(コールセンター)
gehealthcare.co.jp

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