技術解説(フィリップス・ジャパン)
2024年3月号
腹部領域におけるUS技術の最前線
よりシンプルなユーザーエクスペリエンスで確度の高い診断へと導く:フィリップスの技術革新と挑戦
宮本 順子[(株)フィリップス・ジャパン超音波ビジネスマーケティンググループ]
医療現場は今日,患者数の増加とスタッフ不足に直面する一方,超音波検査は速やかで正確な診断結果が求められる。また,超音波検査は術者のスキルによる差が生じやすいとも言われており,精度管理にも課題がある。こうした状況に対処し,患者一人ひとりに最適化された画像診断情報を,迅速かつ高精度で提供する現場のニーズに応えるため,フィリップスはワークフローと効率性に焦点を当て,新しい技術や機能の開発に向け日々挑戦を続けている。本稿では,超音波診断装置「EPIQ」および「Affiniti」シリーズのソフトウエアVM10に搭載されたアプリケーションを紹介する。
■自動画像調整ツール「AutoSCAN Assistant」
自動画像調整ツールAutoSCAN Assistantは,ゲイン・TGC/LGC・focusの手動調整の手間を減らすと共に,患者ごとに検査全体を通して常に最適化されたイメージクオリティを提供する。
1.Next Generation AutoSCAN
従来のエコー検査は,プローブを当てて,まず調整されるのがゲインではないだろうか。患者の体形だけでなく,同じ患者であってもウインドウや体位が変わるたびに調整が必要である。また,肋骨のシャドウのような一部の輝度変化が見られる場合には,TGC/LGCによる調整も必要となる。そのリアルタイムのゲイン・TGC/LGC調整を請け負うのが,進化した「Next Generation AutoSCAN」である。Next Generation AutoSCANは,ピクセル単位の最適化アルゴリズムによって,自動かつ精密に視野全体の輝度バランスを調整する。これにより,手動によるゲインおよびTGC/LGCの調整を減らし,視野全体の視認性を向上させる(図1)。
2.AutoSCAN Penetration
超音波は身体の深部に進むほど減衰するため,全体のゲイン調整だけでなく,TGCによる輝度調整も必要となる。減衰を補正するため深部の輝度を上げる場合もあれば,逆に深部の不必要な輝度をカットする意図でゲインを下げることもある。新たに追加された「AutoSCAN Penetration」機能は,深部領域に特化してシームレスに任意のレベルでゲインを補正し,一定の輝度バランスを保つよう調整する。
3.Auto Focal Zone
EPIQおよびAffinitiシリーズは,高速演算処理により幅広い視野深度で高い分解能を持ち,フォーカス依存の少ないプレシジョンビームフォーミングが採用されている。さらに,VM10では新たに「Auto Focal Zone」機能が組み込まれ,視野深度を変更した際に,画面上の特定の位置に焦点域を維持するように自動でフォーカス調整が行われる。これにより,検査中のフォーカス位置再調整の必要性を大幅に低減し,同時に,検査を通して視野全体で良好な均一性を維持した画像を提供する。
■新しい血流イメージの表示法「Flow Viewer」
Flow Viewerは血流イメージに3D仕様のレンダリングを取り入れた表示法で,血流に立体感を与えることで,従来のカラー画像に比べて,血管の鮮明度や境界の明瞭性に優れ,小血管の分岐と隣接血管の視認性が向上する。また,カラーの血管外へのはみだしや呼吸などの動きによるにじみも減少し,これにより一目でより多くの臨床情報を把握することができる(図2)。
以前はAuto(自動化)と言うと,簡易的で初心者向けやスクリーニングに適するとの印象があったかもしれない。しかし,近年では自動化技術の向上により,簡便かつ精密でマニュアル操作以上のパフォーマンスを発揮する機能も多く,精査用としても活用されている。これらの技術は,初心者から熟練者まで一貫したイメージクオリティを提供し,検査効率および視認性の向上をもたらす。検査時間を短縮できる分,術者は検査に集中することができ,よりシンプルなユーザーエクスペリエンスで確度の高い診断へと導く。
販売名:超音波画像診断装置 EPIQ/Affiniti
医療機器認証番号:225ADBZX00148000
特定保守管理医療機器
管理医療機器
【問い合わせ先】
お客様窓口
TEL 0120-556-494
http://www.philips.co.jp/healthcare