技術解説(フィリップス・ジャパン)

2024年5月号

US Today 2024

フィリップスにおける超音波検査・診断技術の最新動向

梅川 夕佳[(株)フィリップス・ジャパン プレシジョンダイアグノシス事業部]

近年の医療現場は医療従事者不足に直面し,医療システムが逼迫することが予想されている。そのため,デジタルヘルスケアテクノロジーを駆使した労働力不足への取り組みやニーズはますます高まっている。特に日本では,デジタルヘルスケアテクノロジーを使用,または計画しているご施設が91%に上り,これは世界平均の56%と比較しても多い1)。こうした背景から,超音波診断装置における技術革新も検査の効率化や診断能の向上をめざした開発が進んでいる。今回はその一部をご紹介する。

■第4世代の体表3Dセクタトランスジューサ「X5-1c」(図1,2)

多くの自動化技術は,事前に多くの症例による学習を通じて形状をマッチングさせ,計測を自動化するプログラムである。そのため,実臨床では正確で鮮明な画質で描出できていることが,自動計測の確度向上に寄与する。
超音波診断装置「EPIQ CVx」は,超音波の送受信と信号を画像化するプロセスにおいて,ハードウエアのみでなくソフトウエアの能力を併用するビームフォーミング技術「nSIGHT Plus」を搭載し,アーチファクトの低減や画質・フレームレートの向上をもたらす。X5-1cトランスジューサはすべてのモードにおいて,nSIGHT Plus技術を活用し画質を向上している。そのため,X5-1cトランスジューサを使用した検査の80%において,3D左室機能定量の診断確度が改善されたとする報告*1もある。

図1 X5-1cトランスジューサ 先端がカーブ状になっており,日本人の狭い肋間からも走査がしやすいデザインになっている。

図1 X5-1cトランスジューサ
先端がカーブ状になっており,日本人の狭い肋間からも走査がしやすいデザインになっている。

 

図2 X5-1cによる三尖弁の3D画像 フォトリアリスティックなレンダリングを使用した3D画像。3D画像から切り出されたMPR断面も画質が向上している。

図2 X5-1cによる三尖弁の3D画像
フォトリアリスティックなレンダリングを使用した3D画像。3D画像から切り出されたMPR断面も画質が向上している。

 

■AI*2による自動計測技術「Auto Measure」

心臓超音波検査には多くの計測項目があり,検査の長時間化や検者間・施設間誤差が問題となることも多い。
Auto Measureは,米国心エコー図学会(ASE)が定めた成人に対する心臓超音波検査の最新の推奨ガイドライン2)に従い,さまざまな人種,年齢,性別,体格からなる健常者と患者両方の約3000例の解剖学的知識をデータベース化して作成された。これにより,計測に要した時間は,手動で行った場合と比較して平均で51%短縮され*3,迅速かつ再現性のある心機能計測を行うことが可能となった。

■マイクロリニアトランスジューサ「mL26-8」と「Flow Viewer」

フィリップスのトランスジューサポートフォリオの中でも最も周波数の高い8〜26MHzをカバーする,小型リニアトランスジューサがmL26-8である(図3)。表在血管や真皮,乳腺,甲状腺など,幅広い臨床用途での使用が可能で,従来のトランスジューサと比較しても空間分解能が36%,透過性が64%向上している*4。血流情報を表示する機能も充実しており,微細な血流を表示する「MicroFlow Imaging(MFI)」と,3Dのように血流を表示するFlow Viewer(図4)に対応する。これらの機能を組み合わせることで微細な血管の分岐と隣接血管の視認性を向上させ,診断に必要な情報を提供する。
今後もハード・ソフトの2つの技術革新による超音波診断装置の進歩とともに,幅広い臨床ニーズに応えていきたい。

図3 エルゴノミクスデザインを採用したmL26-8 トランスジューサ Journées Francophones de Radiologie(JFR)(2023)の一般画像部門で「Best Innovation Award」を受賞

図3 エルゴノミクスデザインを採用したmL26-8 トランスジューサ
Journées Francophones de Radiologie(JFR)(2023)の一般画像部門で「Best Innovation Award」を受賞

 

図4 mL26-8でFlow Viewerを使用したFistula症例の画像 深さ2cm以内の浅い領域でもきれいに描出できている。

図4 mL26-8でFlow Viewerを使用したFistula症例の画像
深さ2cm以内の浅い領域でもきれいに描出できている。

 

*1 External study at UCMC using Release 9.0 and X5-1c.
*2 AI技術の設計にはDeep LearningまたはMachine Learningを使用しているため,実装後に自動的に装置の性能・精度・アルゴリズムが変化するAdaptive AI(性能変化を意図するAI)ではありません。
*3 Based on Philips external testing as compared to manual measurement methods.
*4 Compared to the predecessor transducer L15-7io.

販売名:超音波画像診断装置 EPIQ/Affiniti
認証番号:225ADBZX00148000
販売名:フィリップス 超音波診断用プローブ X5-1
認証番号:223ACBZX00007000
販売名:フィリップス 超音波診断用プローブ mL26-8
認証番号:305AFBZX00103000

●参考文献
1)The Future Health Index 2023.
www.philips.com/futurehealthindex-2023
2)Mitchell, C., et al. : Guidelines for performing a comprehensive transthoracic echocardiographic examination in adults : Recommendations from the American Society of Echocardiography. J. Am. Soc. Echocardiogr., 32(1): 1-64, 2019.

 

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