技術解説(シーメンスヘルスケア)
2025年3月号
Cardiac Imaging 2025
AIと共に歩む 第五世代Dual Source CT ─SOMATOM Pro.Pulse
藤原 知子[シーメンスヘルスケア(株)CT事業部]
■Dual Source CTの歩み
2005年にSiemens Healthineersが臨床導入したDual Source CTは,心拍数の影響を受けない高い時間分解能を実現したにとどまらず,高い精度でのdual energy imagingや,出力倍増による体格の大きな方への画質劣化防止などを同時に可能にする画期的なシステムであった。
その後も医療現場のニーズに応えながら,イノベーションを駆使した新たな技術や機能を開発,発展させ,小児の撮影や救急分野で重宝される,呼吸や体動によるモーションアーチファクトを排除した広範囲高速撮影,最大80cmの4D imaging,造影剤使用量を低減する低管電圧撮影などを可能にしてきた(図1)。2025年2月現在においてもなお,ハーフ再構成によって100msを切る時間分解能を実現するのはDual Source CTに限られている。
2024年に満を持して登場した「SOMATOM Pro.Pulse(ゾマトム プロパルス)」*は,「AIと共に歩む 第五世代Dual Source CT」という名を冠し,歴代のDual Source CTとして初めて「myExam Companion」を搭載しており,当社独自のAI機能を用いた多種多様な自動化技術を備え,2024年より国内導入されている(図2)。

図1 Dual Source CTの進化の歴史

図2 SOMATOM Pro.Pulse 装置外観
■新機能「ZeeFree」によって心臓CT検査にさらなる安定を
SOMATOM Pro.Pulseは,歴代のDual Source CTと同様に2対のX線管-検出器システムでデータ収集を行うことで,Single Source CTの約2倍となる86msの時間分解能を獲得している。この高い時間分解能によって,高心拍でも動きの影響をなくしたボケのない画像を得ることができる。
一方で,心拍変動や息止め不良によるバンディングアーチファクトについては,以前から心臓CT検査の課題の一つとされており,これらの対策として,SOMATOM Pro.Pulseは新機能であるZeeFreeを搭載した(図3)。
ZeeFreeは,連続する心拍の位置情報をベクトル解析して変化量を特定し,非剛体補正による位置合わせを行い,心臓全体にわたって連続性を担保した画像を作成するアルゴリズムで(図4),従来,診断不可とされたセグメントの75%がZeeFreeを適用することで診断可能になったこと1)や,CTFFR解析およびハードプラーク解析の評価の精度が上がったこと2)などがすでに報告されている。
まずは,前述のとおり,冠動脈領域での有用性が報告されているが,今後は構造的心疾患(structural heart disease:SHD)領域でのZeeFreeの有用性についての報告も期待される。循環器医療全体の技術が高度化する中で,特に近年は,高齢化社会を背景に弁膜症などの構造的心疾患が増加しており,心臓の形態を4Dで観察するニーズも高まっている。冠動脈に関しては,たとえ心拍変動や呼吸によるバンディングアーチファクトが出たとしても,しっかりと静止したフェーズが得られるDual Source CTであれば評価が可能であると言われてきた一方で,4Dデータで弁や左心耳,そのほかの心内構造の動態を見たり,適切な心位相で計測を行うためにはバンディングアーチファクトの影響を排除する必要がある。すでにZeeFreeをお使いいただいている施設には,冠動脈領域以上に構造的心疾患領域での効果に手ごたえを感じていただけている。

図3 ZeeFreeの効果(息止め不良例)
(画像ご提供:Villa Mafalda, Rome)

図4 ZeeFreeのアルゴリズム
■AIと共に歩む 第五世代Dual Source CT─SOMATOM Pro.Pulse
SOMATOM Pro.Pulseでは,撮影前〜撮影中〜撮影後と,CT検査のすべてのフェーズにわたって多様なAI機能によって,オペレーションの効率化,標準化,自動化を行い,業務負担の軽減に貢献している。
一例として,撮影前には「FAST 3D Camera」が正確なポジショニングを補助し,撮影中には「FAST Planning」が撮影範囲やFOVを自動調整,撮影直後に「ALPHA Technology」が部位に応じた軸位を認識したMPR画像を自動作成し,PACSに自動送信する。
また,これら一連のAI機能をより効果的に活用いただくために,myExam CompanionがCT検査全体にわたってオペレータをガイドする。施設ごとのワークフローに沿った形で質問事項を設定し,当社独自の多様な自動化技術を組み込むことで,CT専従でない方でも,エキスパートの思考に沿って一貫したクオリティの検査を実施することを可能にしている(図5)。
これらの機能を活用することで,業務の負荷を抑えて1件あたりの検査時間を短縮し,時間あたりの撮影件数を増加している施設もある。また,撮影や画像処理以外の業務に時間を充てられるようになり,読影補助を行う時間が生まれたり,画像の標準化が進んだことで,医師にとっても読影の安定化や労力の削減につながっているとの声もいただいている。

図5 myExam Companionによってエキスパートの思考に沿って一貫したクオリティの検査を実現
◎
Siemens Healthineersは,CT技術のパイオニアとして,循環器領域にブレークスルーをもたらすことが期待されるSOMATOM Pro.Pulseを通じ,ますます高度化・多様化する循環器診療のニーズに対応した高い水準の医療を提供するため,日本の医療従事者の方々とともに,一人でも多くの患者や検査を受ける方々が質の高い医療へアクセスできるよう引き続き取り組んでいく。
*販売名:ゾマトム Pro Pulse
認証番号:306AABZX00010000
●参考文献
1)Moser, L.J., Mergen, V., Allmendinger, T., et al. : A Novel Reconstruction Technique to Reduce Stair-Step Artifacts in Sequential Mode Coronary CT Angiography. Invest. Radiol., 59(9): 622-628, 2024.
2)Lisi, C., Moser, L.J., Mergen, V., et al. : Increasing the rate of datasets amenable to CTFFR and quantitative plaque analysis : Value of software for reducing stair-step artifacts demonstrated in photon-counting detector CT. Eur. J. Radiol., Open, 12 : 100574, 2024.
●問い合わせ先
シーメンスヘルスケア株式会社
コミュニケーション部
〒141-8644
東京都品川区大崎1-11-1 ゲートシティ大崎ウエストタワー
TEL:03-3493-7500
https://www.siemens-healthineers.com/jp/