Zio Vision 画像の本質を診る(ザイオソフト)
2025年9月号
Ziostation REVORAS活用事例●浜脇整形外科病院 レンブラントやMR骨抽出・MR骨分離機能で内視鏡下脊椎手術などの整形外科診療を支援
ネットワーク型の構築で手術室での画像参照を可能にし,高い画像認識精度で画像作成業務を効率化
広島市中区の医療法人社団おると会浜脇整形外科病院(浜脇澄伊理事長,160床)は,整形外科と泌尿器科を中心に外来から手術まで高度で専門的な医療を提供している。同院では,ザイオソフトの医用画像処理ワークステーション「Ziostation REVORAS」(以下,REVORAS)を導入し,年間3000件以上のCT,MRIの画像処理を行っている。2か所の施設を結んだネットワーク型での運用や,内視鏡を使った低侵襲手術の支援など,整形外科領域での画像解析ワークステーション(WS)の活用を,放射線科の小村哲也主任,重常杏奈技師に取材した。また,内視鏡を用いた小切開手術における3D画像の役割について,脊椎脊髄外科の土居克三部長にインタビューした。
![]() 小村哲也 主任 |
![]() 重常杏奈 技師 |
整形外科・泌尿器科に特化して専門医療を提供
同院は,1978年に浜脇澄伊理事長の父である純一氏が開院。以来,整形外科の専門病院として,脊椎,関節,外傷などを対象に診療を提供してきた。2024年4月には新たに泌尿器科を開設,泌尿器科専門医3名が整形外科とも連携して診療を行っている。同院には,浜脇整形外科病院(以下,病院)と浜脇整形外科リハビリセンター(以下,リハビリセンター)の2つの施設があり,両施設は1kmほど離れている。リハビリセンターでは整形外科の外来とリハビリなど,病院では整形外科の救急車の受け入れ,泌尿器科の外来,入院を主に行っている。整形外科には専門医7名を含む整形外科医12名が在籍し,脊椎,関節,外傷を中心に外来から手術,リハビリまで継続して専門的な診療を提供できるのが特徴だ。小村主任は,「当院では検査から結果の説明,必要であれば手術などの治療まで,できるだけ当日で対応できるように,迅速な診療を心掛けています」と述べる。
画像診断機器は,病院に1.5T MRI(フィリップス社製)と16列CT(キヤノンメディカルシステムズ社製),一般撮影,X線TV,ESWL(体外衝撃波結石破砕装置),超音波診断装置,リハビリセンターには1.5T MRI(キヤノンメディカルシステムズ社製),一般撮影,X線TV,骨密度測定装置,超音波診断装置が導入されている。診療放射線技師は13名で,全員がすべての検査を担当できる体制を取っている。小村主任は,「施設が離れていることと,当直もあり,CT,MRIを含めてすべてのモダリティが扱えるようにしています」と説明する。検査件数は,MRIが年間4500件,CTが年間4000件となっている。
ネットワーク型の導入で2つの施設を統合した環境を構築
同院のREVORASは,2023年に他社製のWSをリプレイスして導入された。導入の経緯について小村主任は,「他社製WSが更新時期を迎えるに当たって検討を進めていたところ,ザイオソフトから新しいWSが発売されると聞き,REVORASを選定の候補としました。選定の決め手は,整形外科で必要とされる骨の認識精度の高さです。骨の形が正常であれば各WSの認識精度は変わらないですが,通常とは異なる変形した骨での認識精度の高さを評価しました。また,きちんと認識しないときの修正の方法が豊富で修正が容易にできるところも評価が高かったポイントです」と述べる。
もう一つ,選定のポイントとなったのがネットワーク型での運用が可能な点だ。小村主任は,「当院は建屋が離れていることから,リプレイスに当たってはネットワーク型を前提に検討しました。以前のWSはスタンドアローンで1か所でしか作業できず,モダリティ側の撮影が進んでも処理の順番待ちが発生していました。今後,接続するモダリティや3D画像作成の件数も増えることが予想され,効率的に対応するためにはネットワーク型は必須でした。また,REVORASでは同時接続数のプランが他社に比べ細かく設定されていて,当院のような小規模の施設にとってリーズナブルな導入が可能な点も助かりました」と評価する。
REVORASは,専用端末がCT操作室,病院とリハビリセンターのMRI操作室の3台で,そのほか放射線科のスタッフルームなどの汎用PCや電子カルテ端末に相乗りで6台にインストールされている。病院には4室の手術室があるが,すべての手術室でREVORASの画像を大型モニタで参照しながら手術が行えるようになっている。小村主任は,「手術室では,電子カルテ端末に相乗りでREVORASのビューモード機能で観察できるようにしています。ビューモード機能では,3D画像の読み込み,表示,回転などが可能で,同時接続数にカウントされずに利用できるのでメリットは大きいです。手術室では看護師や医師による操作がメインですので,操作マニュアルを用意しています」と説明する。

ネットワーク型でZiostation REVORASを導入し,整形外科・泌尿器科の3D画像を作成。
放射線科スタッフルーム(左)とCT操作室(右)
13名のスタッフで年間3000件以上の3Dを作成
同院の3D画像の作成件数は,年間3000件以上に上る。作成の目的は,整形外科ではX線撮影でわからない骨折線の描出などの診断目的,膝や股関節,手の外科,脊椎などの手術支援,患者説明用画像などで,泌尿器科ではMIPやMPRを提供するなど多岐にわたる。小村主任は,「入院前に行われる胸部CT検査以外,ほぼ全例で作成しています」と言う。
3Dの作成業務は,検査と同様にスタッフ全員が担当する。小村主任は作成について,「基本的に検査を担当した技師が3D作成まで行っています。作成については,技師間でのバラツキをなくし,3D画像の質を担保するため,脊椎,四肢など部位ごとに基本的な作成の手順を決めたマニュアルを作成しています。ただ,四肢などでは骨折線の入り方や撮像範囲など症例に合わせた対応が必要な例もあり,個人の判断に任せている部分もあります」と説明する。3D画像のクオリティコントロールは,重常技師が担当しており,マニュアル作成や画像のチェック,診療科医師とのコミュニケーションなどを行っている。マニュアルでは,作成した3D画像の彩色(カラー),角度や回転の方向,枚数などを記載している。また,REVORASでは,マクロ機能やテンプレート,プリセットなどの活用で,作成する3D画像の仕様の統一,作成時間の短縮につながっていると重常技師は次のように言う。
「REVORASでは,マクロやテンプレートなどを使うことでスタッフ間の画像が標準化でき,ボタン1つのクリックで色や角度を合わせることができます。マクロでインプラントだけを残して画像の加算,減算をして回転させる手前までワンボタンで処理でき,業務の効率化にもつながっています。マクロの登録も簡単で,すぐに呼び出すことができるので助かっています」
重常技師は画像作成の際に心掛けていることとして,「事前に術式などを確認して,手術の際に必要と思われる部位や角度,回転方向などを出せるようにしています」と言う。整形外科領域での画像作成の注意点については,「骨折症例では第3骨片などに気がつかずに削除してしまうケースがあるので,マスクで確認しながら進めるようにしています」とのことだ。作成に関しては,マニュアルはあるものの個人の裁量に任される部分も多いという。重常技師は,「カルテを見て術式を確認し,必要とされる画像を予想して3Dを作成しています。骨折部がある場合には,正面側面だけでなく骨折が見やすい角度の画像も追加します。どんな画像を作成するかは,基本的に担当者に任せています。そのため,放射線科では2週間に1回程度症例発表会を開いて,それぞれが作成した画像の内容や作成方法などを全員で共有するようにしています」と述べる。

診療放射線技師は全員が3D画像作成を担当
■Ziostation REVORASによる3D画像
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図1 術前画像 |
![]() 図2 椎間板+神経根のMRフュージョン画像 |
![]() 図3 長母指伸筋腱(EPL)断裂 |
![]() 図4 離断性骨軟骨炎(上腕骨小頭OCD) |
レンブラントを活用し脊椎内視鏡下手術の術前画像などを作成
REVORASの新しい画像表示法である「レンブラント」や「トランスペアレンシー」は,骨折線の描出や手術の支援画像に活用されている。重常技師はレンブラントについて,「前後の位置関係がよりわかりやすく表現でき,患者説明用の3D画像の作成が可能になっています」と述べる。また,トランスペアレンシーでは,構造物の輪郭を残したまま内部を透過させた表示が可能で,従来のオパシティカーブによる透過度の調整より構造物の位置関係の把握が容易になった。重常技師は,「トランスペアレンシーでは,骨折の様子をわかりやすくするため,正常な骨を透かして関節面の様子を観察しやすくしたり,インプラントやセメントを入れる手術で骨の関係性がわかりやすく描出でき,治療方針の決定や術後の確認に有用な画像を提供できています」と述べる。
同院では,脊椎,関節,外傷などのさまざまな疾患に対して年間1720件(2024年度実績)の手術を行っている。脊椎脊髄外科では,土居部長が内視鏡を用いた脊椎手術(MED / MEL,FESS)に積極的に取り組んでいる(下記インタビュー参照
)。内視鏡手術では視野が限られるため,患部の確認のために術前の3D画像を提供している。小村主任は,「通常の切開手術では椎体と神経のフュージョン画像はあまり要望がなかったのですが,内視鏡下手術が増えるにしたがって術前の検討や術中の確認のために作成するケースが増えています」と述べる。脊椎内視鏡手術では,CTで椎体を,MRIで椎間板や神経根を抽出してマルチデータフュージョンして作成している。術前画像については,放射線科が3D画像を作成し提供しはじめたが,執刀する土居部長の要望で作成する画像の方向やヘルニアの描出方法などをブラッシュアップさせていった。重常技師は,「実際にどのように手術が行われて3D画像がどのように使われているのかを,手術室で見学したり,手術に必要な画像を医師からフィードバックをもらったりして改善しながら進めています」と述べる。
MR骨抽出・MR骨分離機能で3D画像作成の手間と時間を削減
同院では,MRIのBone like imageを3D画像作成に活用している。Bone like imageは,MRIで骨や靭帯などを描出する撮像法で,同院では主にフィリップス社製のMRIで「FRACTURE(Fast field echo resembling a CT using restricted echo-spacing)」を使用して作成している。小村主任は,「FRAC
TUREによってMR画像のみで骨や靭帯の描出が可能です。腰椎分離症や手の靭帯の描出などを行っています」と述べる。腰椎分離症では,若年の患者に対してCTを撮影せずにMRIから作成することで被ばくの低減にもなっている。
REVORASでは,3D解析に「MR骨抽出・MR骨分離」の機能が新たに搭載された。MR骨抽出・MR骨分離では,Bone like imageからワンクリックで骨領域だけを選択して抽出し,分離することが可能だ。小村主任は,「Bone like imageを見た時に,VRの作成が可能ではと考えて試してみたのですが,各組織間の信号値の差が小さく思ったより大変でした。そこでBone like imageでCTの骨分離機能と同様の手順で作成できないかと要望していました。実際にMR骨抽出・MR骨分離が搭載されて,骨のワンクリックでの抽出や,CTと同じように骨の抽出点と除外点を選択することで分離が可能になり,作成時間は大幅に短縮されました」と述べる。手の外科の長母指伸筋腱(EPL)の断裂の術前画像も,以前はCT画像から作成していたが,Bone like imageとREVORASのエクステンダー機能を使って靭帯を描出している。小村主任は,「エクステンダーでは,クリックすることで同じ信号値の部分を追いかけていけるので,神経根や靭帯を抽出するのに助かっています」と述べる。
Bone like imageとMR骨抽出・MR骨分離によって,MRIのみで骨と靭帯や腱を組み合わせた3D画像の作成が可能になった。小村主任は,「MR骨抽出・MR骨分離では認識精度が向上し,骨を分離して靭帯や腱を抽出することで,MRIのみで術前画像が作成できます。現在はスクリューなどインプラントの計測などがありCT撮影は必要ですが,今後,MRIのみで脊椎の術前画像を作成することも可能になるのではと期待しています」と述べる。重常技師は,「CTとMRIでは検査時の体位が異なりフュージョンしても位置が合わないことがあるので,MRIのみで作成できるようになれば,より精度の高い3D画像が作成できると思います」と言う。

手術室ではZiostation REVORASのビューモード機能で画像を参照
WSの高い画像認識機能を生かして診療を支援
整形外科領域でのREVORASへの期待について小村主任は,「ザイオソフトはMR骨抽出・MR骨分離機能の搭載など,現場の要望にレスポンス良く対応してくれるイメージがあるので,これからも画像処理の業務効率や提供する画像の質が高まる機能が搭載されることを期待しています。例えば,大腿骨近位部骨折では,回旋動脈損傷の有無が術後の経過に関係します。そういった細動脈レベルの描出もできるようになるといいですね」と期待する。
3D画像を積極的に作成して診療科に提供することで,整形外科や泌尿器科におけるより専門的な診療を展開し,これからの地域のために発展を続けていくことだろう。
Interview
画像が拓く整形外科診療の新たな可能性
REVORASの手術支援画像を術前・術中に使用して,より低侵襲で安全な内視鏡下脊椎手術を実施
脊椎脊髄外科・土居克三部長に聞く

土居克三 部長
内視鏡を用いた低侵襲手術を専門とする脊椎脊髄外科・土居部長に,低侵襲手術における3D画像の役割や今後の期待をインタビューした。
─脊椎脊髄外科での診療について
椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症に対する低侵襲手術を専門に行っています。脊椎の低侵襲手術では,内視鏡を使うことで10〜20mm程度の切開で,筋肉や骨の切除なども少なくてすみ,患者さんの負担を軽減することができます。術式には,内視鏡下椎間板摘出術(Micro Endoscopic Discectomy:MED),内視鏡下椎弓切除術(Micro Endoscopic Laminectomy:MEL),全内視鏡下脊椎手術(Full-Endoscopic Spine Surgery:FESS)などがあり,MED/MELでは18mm,FESSでは10mm程度の切開で,筋肉を切離することなく脊椎までアプローチして治療を行います。適応となるのは,外側腰椎椎間板ヘルニア,腰椎椎間板ヘルニア,化膿性脊椎炎,腰部脊柱管狭窄症などです。年間で手術は約180件ですが,そのうち100件程度が内視鏡下でMED/MELが60例,FESSが40例という割合です。
─内視鏡下手術におけるREVORASの活用について
内視鏡手術では視野が限定されるので,術前にREVORASで作成した3D画像で患部の状態や,内視鏡でアプローチする方向を確認しています。特にMEDに比べて使用する内視鏡の直径が7mmと細いFESSでは,3D画像で位置や角度が確認できることで,より安全な手技が行えます。外側ヘルニアや椎間孔狭窄の形状などの確認では,3D画像によって神経根とヘルニアの前後の位置関係や狭窄の程度を見るのにREVORASの画像が役に立っています。
当院では手術の際に手術室内のモニタに,X線,MRI,CTの画像に加えて,REVORASの3D画像を表示しています。通常であれば,CTやMRIで神経根とヘルニアの位置関係を確認して進めますが,脊椎の奇形がありアプローチ時に神経の位置が違うことに気がついたケースがありました。術中にREVORASの画像を見直してアクセスする方向を変えることで,余計な侵襲をせずに安全に手術を終えることができた症例を経験したことがあり,REVORASによる3D画像の効果を感じました。
─内視鏡手術の支援画像としての評価は
内視鏡の手術支援画像は,REVORAS導入後に放射線科からの提案で始まりましたが,こちらからも手術で必要な画像の角度や部位の彩色などの要望をフィードバックして,見やすくわかりやすい画像が提供されています。FESSを積極的に行っている施設でも,3D画像による手術支援の例はあまり聞かないので先進的な取り組みなのだと思います。一番の効果はやはり安全性が高くなることです。術野を事前に画像として把握できることで,アプローチがしやすくなりミスなく安全に手技が行えることが大きいですね。1mm,2mmのズレが問題となり精度の高い手技が求められる脊椎手術では,ナビゲーションシステムなども使用されていますが,専用の装置の導入が必要で高価です。REVORASではCTやMRIから3Dによる手術支援画像が作成でき,より正確な低侵襲手術が可能になります。
─これからのREVORASへの期待は
診断でも,REVORASの画像は痛みやしびれなどの症状の原因を把握するためにも有効です。MRIのBone like imageでは,CTのような画像が取得でき骨や靭帯などの評価が可能です。腰椎分離症では,MRIとCTで分離の程度を確認しますが,Bone like imageであれば1回の撮像で分離の程度まで確認できます。特に若年の患者さんの場合,検査時間的にも被ばくの観点からもメリットがあるため活用しています。
脊椎領域の内視鏡手術も,ほかの領域と同じようにより低侵襲化する方向で発展しています。侵襲が小さくなれば患者さんへの負担は小さくなりますが,視野も限られ自由度が下がることから,手技の難易度が上がります。3D画像による手術支援には,より安全な手技のためだけでなく,教育的な効果にも期待しています。

浜脇整形外科病院(左)と浜脇整形外科リハビリセンター
浜脇整形外科病院
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