ITEM2024 バイエル薬品 ブースレポート
新コンセプトのマルチユースCT用造影剤自動注入装置「MEDRAD Centargo」など,新たな時代を切り開くイノベーションをアピール
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2024-5-9
バイエル薬品ブース
バイエル薬品は,循環器・腎臓病領域,オンコロジー領域,婦人科領域,画像診断領域など,特にアンメット・メディカル・ニーズが高い領域に注力してイノベーションを提供している。そのうち画像診断領域では,造影剤や自動注入器,線量管理システムなどにより,検査前の患者情報の取得やプロトコールの生成,検査情報の記録・管理やAIによる読影支援まで「より良いケアとサステナビリティのために」をコンセプトにサポートを行っている。ITEM2024では,新発売のマルチユースCT用造影剤自動注入装置「MEDRAD Centargo」をはじめとする各種造影剤注入装置ラインアップや大規模病院で約40%のシェアを占める線量管理システム「Radimetrics」,CT画像や単純X線画像の読影診断支援ソフトウエアなどのAIソリューションなど,検査品質や読影の精度,効率などの向上をめざしたソリューションを展示した。
●新たなコンセプトのマルチユースCT用造影剤自動注入装置MEDRAD Centargoが登場
2023年10月に発売したMEDRAD Centargoは,検査ごとの造影剤や生理食塩水の充填が不要でエアマネジメントを自動化するなど,従来のシリンジを使用した造影剤注入装置とコンセプトがまったく異なるソリューションである。造影剤や生理食塩水をボトルやバッグから24時間連続使用が可能なデイセットに充填,検査終了時には使用した分の造影剤や生理食塩水がデイセットに自動で追加充填される。シリンジ製剤よりも付属品が少なく体積が小さいボトル製剤を使用するため,従来に比べ造影剤の保管場所のスペースや医療廃棄物量の削減が可能である。また,シリンジ製剤では廃棄されていた余剰溶液の有効利用が期待される。検査後は患者ラインを交換するだけで次の検査に移行でき,ライン交換後は2か所のセンサ(インレットエアセンサとアウトレットセンサ)でエア混入を自動検出するため,安全に注入を行える。造影剤や生理食塩水の充填やエア抜きの自動化により作業効率の向上や医療従事者の負担軽減を支援するほか,本体のタッチパネルや操作室のコントロールルームユニットでも操作でき,技師1人でも対応可能である。また,プロトコールの設定・登録,注入データの自動保存機能やプロトコールをパーソナライズ化する追加ソフトウエア「Smart Protocols」も搭載する。Smart Protocolsは,装置の管電圧設定や患者の体格,造影剤濃度などに基づいて造影剤投与量や注入速度などの注入プロトコールを自動で算出する。さらに,院内に保存したプロトコールを基に,推奨される投与オプションも提案可能である。
●循環器血管撮影,MRI用など,多彩な造影剤注入装置ラインアップを展示
造影剤注入装置では,MEDRAD Centargo以外に循環器血管撮影用造影剤注入装置「Arcatena」やMRI用造影剤注入装置「MRXperion」などが展示された。Arcatenaは,循環器血管用インジェクタとして国内初のデュアルヘッド(シリンジ)を採用。造影剤と生理食塩水の同時注入が可能で,独自の流路設計により三次元のスパイラルフローを生成する「Spiral Flow Tube」により造影剤と生理食塩水を効率的に混和し,造影剤使用量を削減する。注入時はBluetooth接続のハンドコントローラ(注入スイッチ)で操作可能で,ワイヤレス化したことで寝台上の術環境を清潔に保持できるほか,術者の操作範囲を限定しないことで医療従事者の被ばく低減にもつながる。ハンドコントローラは人間工学に基づいたデザイン設計で,60段階の速度制御に基づき手打ち感覚で造影剤の注入をコントロールできる。シリンジやチューブのセットアップも容易なほか,アクティブバルブを利用した流路遮断システムの採用,マルチセンサによる流路内エアの監視など安全性の向上も図っている。2023年1月の発売以降すでに50台以上が導入されており,撮影装置の更新の有無にかかわらず注入装置のみがArcatenaに更新されたケースもある。
MRXperionは,造影剤と生理食塩水のデュアルシリンジが装備された自動注入装置で,2015年に米国で発売され,日本では2020年の発売以降,年間約40〜50台が導入されている。オペレータの負担軽減や操作時間の短縮をめざして開発され,シリンジ内筒後端を検出し自動で接続する「自動ドッキング機能」,シリンジ装着後にピストンが自動で前進する「自動アドバンス機能」,ワンタッチで生理食塩水を空気が入らないように吸い上げる「自動ロード機能」,チューブ内のエア抜きを自動で行う「自動プライム機能」,シリンジを取り外すとピストンが自動で初期位置に後退する「自動リトラクト」などのオート機能を標準搭載し,作業効率を向上する。Webブラウザを介した注入履歴の管理機能を標準装備するほか,オプションとしてRISとの接続により患者情報を取得,体重を基に必要な生理食塩水量を自動計算する機能も搭載する。
●線量管理システムRadimetricsではバイエル社製注入装置と連携した「Total Dose Management」を提案
線量管理システムRadimetricsは,マルチモダリティ,マルチベンダーに対応したベンダーニュートラル線量管理システム。2014年に発売されたRadimetricsは線量管理システムの先駆者とも言え,現在特定機能病院などの大規模病院で約40%のシェアを占める。モダリティから検査情報および線量情報を自動的に取得,統合し,検査ごとの照射線量や被検者の被ばく線量を管理,記録する。HL7によるHIS/RISとの連携や患者IDなどに基づくURL連携による線量情報表示機能を活用し,より効率的な線量情報の共有が可能になるほか,蓄積した線量情報を解析・分析するための「概要ページ」など線量の最適化を促進する機能を搭載する。さらに,管電圧や電流,照射範囲などを変更した場合の線量シミュレーション機能は,例えば具体的なデータとして主治医や患者に提供するなどの活用が可能である。年1回のバージョンアップを行っており,近年は線量管理サーバとクライアント間の通信プロトコルとしてSSLを採用するなど,セキュリティ関連の強化などを行っている。医療法施行規則の一部改正など線量管理を取り巻く環境の変化への対応が求められる中,大規模病院に加え,今後は線量管理に注力する中小規模の施設にも展開を図っていく予定だ。
加えて,バイエル薬品が新たに提案するのが医療放射線情報と造影検査情報の一元管理が可能なTotal Dose Managementである。RadimetricsをMEDRAD CentargoやMRXperionなどのバイエル社製造影剤注入装置と連携することで,注入条件や開始・終了時間,操作者,最大注入圧・流量などのデータを注入装置から取得。これらの情報を画像としてRadimetricsからPACSに送信し,検査装置から取得したCTやMR画像と造影検査情報を同時に参照することで造影効果を確認でき,読影効率の向上が期待される。また,前回検査の注入プロトコールを院内端末から確認し,再現性の高い造影検査が行えるほか,注入速度や注入圧の波形の変化も表示でき,血管外漏出が生じた検査などの注入圧波形を確認できる。さらに,造影検査の業務記録を自動化し,1か月間の造影検査件数やプロトコールごとの検査件数の集計が行え,業務フロー改善に寄与する。
●胸部CT画像の読影支援ソフトウエア「Plus.Lung.Nodule」など各モダリティ画像に対応するAI画像解析ソフトウエアをアピール
AIソリューションのコーナーでは,胸部CT画像の読影支援ソフトウエア「Plus.Lung.Nodule」やその追加機能の「Plus.CXR」,腹部領域MRI読影支援AIソフトウエア「Cal.Liver.Lesion」などのデモ展示が行われた。Plus.Lung.Noduleは,CT画像から肺野内の2〜30mmのCT値上昇領域および肺門縦隔部に関心領域(ROI)を表示し,結節影などの視認性を高める。長径,短径,平均径,面積,体積,平均CT値,結節を三次元楕円体近似した際の主軸3軸の長さを自動計測するほか,過去画像と自動で紐付けするオートトラッキング機能により,体積倍加時間を容易に計測できる。非造影CTや低線量CT画像,肺野条件・縦隔条件,リンパ節の視認性が不良な画像など,さまざまな画像に対する処理が可能である。なお,院内のPACSと連携して動作し,通常のDICOMビューアでAIの処理結果を表示可能で既存の読影環境でも利用できる。
ITEM2023で紹介されたPlus.CXRは,胸部単純X線画像上の肺野内において吸収値が高い領域にROIを表示する。また,心拡大や心肥大の診断基準である心胸郭比(cardio-thoracic ratio:CTR)を自動計測し,読影を支援する。Plus.Lung.Noduleの解析用PCに追加導入できるほか,単独で解析用PCにインストールすることも可能である。
2023年に発表したCal.Liver.Lesionは,神戸大学大学院医学研究科放射線医学分野と株式会社HACARUSの共同研究の下,株式会社HACARUSにより開発されたAIを活用したオンプレミス型の画像解析ソフトウエアである。肝特異性造影剤EOB・プリモビストを用いた多血性肝細胞がん診断では約10種類の異なる条件でのMRI撮像が必要で,その分読影医の負担は大きくなる。そこで,Cal.Liver.Lesionは,標準的なEOB・プリモビスト造影MRI検査プロトコールで撮像された画像を自動解析し,機械学習を使用して周囲と異なる信号値の領域を自動抽出。信号値の異なる度合いを0.0〜1.0で表し,0.5以上の領域をカラー表示(0.5:青〜1.0:赤)したカラーマップを作成し,視認性向上を図ることで読影を支援する。Plus.Lung.Noduleと同様に,通常のDICOMビューアでAIの処理結果を確認できる。
●お問い合わせ先
社名:バイエル薬品株式会社
住所:〒530-0001大阪市北区梅田2-4-9 ブリーゼタワー
Mail:BYL-RAD-CS@bayer.com
URL:https://radiology.bayer.jp/