ITEM2025 バリアン メディカル システムズ ブースレポート
次世代型イメージングソリューション搭載の「TrueBeam HyperSight」をはじめ,“One Healthineers Echosystem”を実現する放射線治療ソリューションを展示
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2025-5-9

バリアンメディカルシステムズブース
バリアンメディカルシステムズ(以下,バリアン)は,放射線治療装置や放射線治療計画システム,放射線治療情報システム,小線源治療装置,関連システムなど,放射線治療に関する幅広い製品を取り扱い,医療機関のニーズに合わせた柔軟な提案を行っている。今回の展示では,それらの製品のうち,次世代型イメージングソリューション搭載の「TrueBeam HyperSight」と,体表面モニタリングシステム「IDENTIFY」が大きくアピールされた。2024年9月に販売が開始されたTrueBeam HyperSightは,バリアンのフラッグシップの放射線治療装置「TrueBeam」に,新しいcone beam CT(CBCT)ソリューション「HyperSight」を搭載。CBCTの撮影スピードの高速化や画質改善などが図られ,放射線治療に新たな価値を提供するとして来場者の関心を集めた。IDENTIFYは,ステレオビジョンカメラの活用によって,セットアップ中や治療中の患者の体動をリアルタイムにモニタリングすることができる。ブースでは,治療室を模した展示でIDENTIFYの有用性などがアピールされた。
また,バリアンは今回もシーメンスヘルスケア(以下,シーメンス)と合同ブースを出展した。過去のITEMにおいても,両社のソリューションが相互に連携して機能する“One Healthineers Echosystem”を実現していることをアピールしてきたが,今回も新たな展開として,治療計画用CTの撮影から治療実施までのワークフロー改善に寄与する機能が紹介された。
これらのほか,放射線治療計画システム「Eclipse」のVersion 18.0(v18.0)では,計算速度や操作性が向上したことに加え,多発脳転移などの複数のターゲットに対する定位手術的照射(SRS)専用ツール「HyperArc」がブラッシュアップされた。アフターローダシステム(小線源治療装置)「BRAVOS」では,豊富なアプリケータが展示された。
●次世代のCBCTソリューションを搭載した「TrueBeam HyperSight」による新しいワークフローを提案
前回のITEMでは,HyperSight搭載装置としてリング型ガントリの「Halcyon HyperSight」と即時適応放射線治療ソリューション「ETHOS Therapy HyperSight」が発表されたが,さらに,昨年9月には,新たにTrueBeam HyperSightの販売が開始された。TrueBeamはハイエンドの放射線治療装置で,標準治療はもとより,複雑かつ高精度な照射が求められるSRSや体幹部定位放射線治療(SBRT)などを正確・迅速・安全に実施することができる。TrueBeamでは,治療時のガントリ回転速度は60秒であるが,HyperSightの搭載に伴いハードウエアやソフトウエア,照射技法,安全技術などを進化させ,CBCT撮影時のガントリ回転速度が約1.5倍に高速化,最短17秒でのCBCT撮影が可能となった。HyperSightではイメージングパネルが一新され,43cm×43cmに拡張したほか,画像再構成アルゴリズムの改良や金属アーチファクト低減技術の搭載などによって,治療計画用CTの画像と遜色のない高画質が得られる。撮影スピードの高速化と相まって,患者の体動や息止め不良などの影響を低減したより良好な画像が得られるようになり,HUの精度や軟部組織のコントラスト検出能が向上した。
また,CBCTの撮影スピードの高速化や画質向上に伴い,放射線治療に新たな価値を生み出すことが期待されている。頭頸部がんや食道がんなどでは患者の食欲減退によって放射線治療の途中で体型変化が生じることが多く,再治療計画を行うことがある。その際,通常は再度,治療計画用CTの撮影が必要となるが,HyperSightのCBCT画像は治療計画の立案にも使用できるため,HyperSightの画像を基に再治療計画を行い,適応放射線治療を実施することが可能となった。
なお,CBCT画像のバリデーションはシーメンスのCTチームが行っており,将来的にはシーメンスのCTに搭載されている技術をHyperSightに投入することも検討されている。

「TrueBeam HyperSight」によるCBCT画像例
●より高精度な画像誘導放射線治療(SGRT)の実施に寄与する体表面モニタリングシステム「IDENTIFY」
体表面モニタリングシステムIDENTIFYは,治療計画用CT撮影時の呼吸管理や,放射線治療のセットアップおよび治療中の体動のモニタリングなどによって,高精度なSGRTを支援するシステムである。3台のカメラを用い,患者の肌の色の影響を受けない青色の可視光のパターンを照射して,サブミリメートルの精度で患者の動きをリアルタイムに計測し,体表面情報をモニタ上に表示する。これにより,セットアップや治療中の患者の動きが許容範囲内にあるかを常に監視でき,また,CBCTの画像と併せて使用することで,より高精度な放射線治療が可能となる。ノンコプラナー照射にも対応しており,一般的な照射はもとより,HyperArcとの併用も可能である。
IDENTIFYは,同社の放射線治療ソリューションの一つとして使用するメリットが大きい。具体的には,IDENTIFYを立ち上げると,同社の放射線治療情報システム「ARIA OIS」の患者データベースから自動的に患者情報が取得されるほか,位置合わせが完了するとTrueBeamなどの放射線治療装置にも情報が共有され,治療終了と同時にIDENTIFYのセッションが自動的に終了するなど,操作や患者データの取り扱いをシームレスに行うことが可能となる。このような点はユーザーからも高く評価されており,2024年に新規で販売した放射線治療装置の約4割でIDENTIFYが採用された。

体表面モニタリングシステム「IDENTIFY」のコーナー
●放射線治療計画システム「Eclipse」のv18.0では「HyperArc」をブラッシュアップしワークフローを最適化
放射線治療計画システムEclipseのv18.0では,計算速度の向上や操作性の改善に加え,HyperArcがブラッシュアップされたことが紹介された。HyperArcは,多発脳転移などの複数のターゲットに対し定位照射を一括で効率的に実施できる技術。Eclipse v18.0では,正常組織の線量を抑制する最適化パラメータ「SRS-NTO(Normal Tissue Objective)に加えて,体幹部定位放射線治療(SBRT)などのより広い領域の転移性腫瘍にも対応する「SBRT-NTO」が搭載された。近年,SBRTの普及率が向上し,高線量化や照射の寡分割化が進んでいるが,寡分割化するためにはターゲットに対しより安全に高線量を照射する技術が求められる。従来,各臓器や正常組織への線量処方はマニュアル操作で最適化していたが,SBRT-NTOでは線量体積ヒストグラム(DVH)をドラッグするだけで関連する数値が自動で調整され,線量の最適化が図られるようになった。放射線治療計画システムでは,通常,コンツーリングを行うことで正常臓器・組織を認識するが,SBRT-NTOではターゲットや特に線量を下げたい重要部分だけをコンツーリングしておけば,そのほかの正常臓器・組織についてはまとめて線量を最適化することができる。
このほか,Eclipse v18.0では,より強化されたmulti leaf collimator(MLC)モデリングである「Enhanced Leaf Modeling」が搭載された。Enhanced Leaf Modelingは,MLCを通過して実際に入ってくる線量を正しく,より正確に把握するためのツール。MLCが複雑に動作する高精度放射線治療において,Enhanced Leaf Modelingを用いることでより正確なコミッショニングデータの取得が可能となる。

SBRT-NTO(左)とNTO(右)の画像例。SBRT-NTOでは,より良好な線量分布が得られる。
●国内での導入が進むアフターローダシステム「BRAVOS」では,アプリケータの拡充をアピール
アフターローダシステムBRAVOSは,EclipseやARIA OIS,TrueBeamなどとの高い親和性や,「CamScale位置確認システム」による精度管理,および自由度の高い操作性によって,小線源治療を効率的に実施できることが特長である。小線源治療計画装置「BrachyVision」がEclipse内に統合されているため,同社の外部放射線治療装置と共通の操作性で小線源治療計画が可能であり,ハイブリッド照射の治療計画もEclipse 1台でできることから,国内での導入が進んでいる。
今回のITEMでは,装置本体は展示されなかったが,新たに組織内照射併用腔内照射に使用するハイブリッドタイプの「オーフスアプリケータ」が紹介された。オーフスアプリケータは,デンマークのオーフス大学病院と共同開発した樹脂製のハイブリッドアプリケータ。CTはもとよりMRIにも対応するほか,メモリ付きのプラスチックニードルを併用することで,患者の腫瘍に応じた適切な線量分布を自由度高く作り出すことができる。メモリ付きのニードルは刺入の深さを確認しやすいほか,滅菌や高圧に耐える素材を使用しているため再使用が可能で,コストの抑制にも寄与する。

アフターローダシステム「BRAVOS」のコーナー

豊富なアプリケータ。ガラスケース上に置かれているのは,左上からマルチチャンネルシリンダ,インタースティシャルシリンダ,オーフスアプリケータとメモリ付きのプラスチックニードル
●One Healthineers Echosystemを実現する新機能「DirectSetup Notes」を紹介
バリアンとシーメンスは,これまでのITEMにおいて,包括的ながん治療へのアプローチとして両社のシナジーの成果をアピールしてきたが,その一つとして今回,新たにDirectSetup Notesが紹介された。これは,シーメンスの治療計画用CTに搭載された患者情報などを確認するタブレットで,CT撮影時の患者の固定の状況を写真撮影し,ARIA OISに直接データを送信できる機能。従来は,カメラなどで撮影したデータを電子カルテに貼り付け,それをARIA OISで呼び出して取り込むという作業が必要だったが,その作業が不要となった。
両社はすでに,One Healthineers Echosystemを実現する機能として,コンツーリングとそれに伴うデータフローを自動化する「Zero Click Auto Contouring」を実装している。Zero Click Auto Contouringでは,シーメンスのCTで撮影されたデータが放射線治療計画システム「syngo.via RT Image Suite」(シーメンス社製)に転送されると,AI技術を用いて自動でコンツーリングが行われ,コンツーリングされたデータが自動でEclipseに転送される。これらはすべてバックグラウンドで,まさにゼロクリックで実施されるため,ワークフローの改善やコンツーリングを行う時間の大幅な短縮が期待できる。さらに,DirectSetup Notesを実現したことで,治療計画用CTの撮影からコンツーリング,治療計画,照射までの一連の流れが,より効率化されることが期待できる。

「DirectSetup Notes」のイメージ
●お問い合わせ先
社名:株式会社バリアン メディカル システムズ
住所:141-0032 東京都品川区大崎1丁目11番1号 ゲートシティ大崎ウエストタワー
TEL: マーケティング部 TEL 03(4486)5235
URL:https://www.varian.com/ja