キヤノンメディカルシステムズ,「画論 27th The Best Image」開催
2019-12-17
厳正な審査を経て“ The Best Image”を発表
キヤノンメディカルシステムズ(株)は,2019年12月15日(日),「画論 27th The Best Image」をキヤノン(株)本社(東京都大田区)で開催した。キヤノン本社での開催は同社が社名変更した直後の第25回以来2回目となる。本社敷地内の御手洗毅記念館内ホールなどの施設を利用して,ディスカッションや講演,発表式などが行われた。
“画論The Best Image”は,単なる画像のクオリティにとどまらず,診断や治療への寄与や撮影や画像処理の技術や工夫など総合的な臨床価値を判断して最良のイメージを選定するイベントである。今年は全国から467件の応募があり,その中から49件が優秀画像に選ばれ,最終審査として当日のディスカッションに出席した。
発表会の最後に挨拶した同社代表取締役社長の瀧口登志夫氏は,「キヤノンメディカルシステムズの“Made for Life”のスローガンは,われわれの技術や製品が臨床現場で最大限に活用されてこそ,その真価が発揮されるものであり,その意味でも画論に応募いただいたすべての施設の努力によって実現されていると考えている。2019年はラグビーワールドカップで話題となった“ONE TEAM”が流行語となり,一つにまとまることで大きなことが成し遂げられることを国民が実感した年になった。キヤノンのメディカル事業は,グローバルにおいて“ONE CANON”として事業の統合を進めている。日本でも2020年からキヤノンライフケアソリューションズ,AZEといった関連会社の統合を進め,これまで以上にONE CANONとして臨床の現場に役立てられる技術,製品,サービスを提供して臨床のお手伝いができるように精進していきたい」と述べた。
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午前のディスカッションに続いて,午後からはCT/MRと超音波の2会場で特別講演が行われた。CT/MR会場では,「臨床最先端〜新たな診断の可能性〜」と題してCTとMRの最先端研究の報告が行われた。
CTは,岩手医科大学医学部放射線医学講座教授の吉岡邦浩氏を座長に,慶應義塾大学医学部放射線科学教室教授の陣崎雅弘氏が「立位CT〜重力下の人体の可視化」と題して講演した。陣崎氏らは,立位で人間の病態生理や解剖学的構造を定量的に評価可能なCTの開発が必要であると考え,2012年に当時の東芝メディカルシステムズに立位CTプロジェクトを提案,2017年に1号機を導入して臨床研究を進めてきた。講演では,研究でわかってきた臥位と立位で変化する解剖学的構造や機能性疾患について解説した。臥位と立位での構造の変化については,著明な領域として静脈を挙げ,静水圧の影響による変化の違いや,一方で頭蓋内の静脈は体位により変化しないことなどを説明。また,上大静脈の径を定量評価することで,心不全の重症度判定に応用できる可能性を示唆した。そして,立位CTにより動脈からリンパ,髄液まで総合的に評価できることで循環系が解明されると述べ,体位を考慮した静脈の診断学を構築する必要があるとした。さらに,小脳扁桃の変位や肺葉ごとの体積変化,骨盤臓器の変位など,立位CTで判明してきた構造変化を紹介。また,脊椎すべり症や膀胱脱,変形性膝関節症など,立位撮影で把握できる疾患についても解説した。陣崎氏は,現在は運動器疾患が重点疾患になりつつあり,健康長寿をめざす社会においては機能評価が重要であると述べ,立位の診断学を確立することで機能性疾患の早期発見に活用できるだろうと展望した。
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MRは,順天堂大学医学部・大学院医学研究科放射線医学教室放射線診断学講座教授の青木茂樹氏が座長を務め,名古屋大学大学院医学系研究科総合医学専攻高次医用科学講座量子医学分野主任教授の長縄慎二氏が「Glymphatic SystemとMRI」を講演した。長縄氏は,Glymphatic System(脳の老廃物排泄機構)について概要を説明した上で,MRによるGlymphatic Systemの画像化研究として,ノルウェーの研究者が取り組んでいる髄腔内ガドリニウム造影や,北海道大学の工藤與亮氏らによる17O安定同位体標識水造影などを紹介。そして,自身らがキヤノンメディカルシステムズのMRIを用いて取り組んできた,静注ガドリニウム造影による画像化について詳述した。長縄氏らは,HYDROPS法やそれを応用した3D-real IR法を開発し,ガドリニウム造影剤の脳静脈から脳脊髄液への漏出や,クモ膜下腔から髄液リンパ管への排出,血管周囲腔の造影評価からGlymphatic Systemの解析を行ってきた。長縄氏はこれまでの研究から,加齢によりガドリニウム画像に変化が認められ,変性疾患で重要な神経炎症を描出していると考えられると説明し,今後,さまざまな疾患で研究を重ねていくと述べた。
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超音波講演は,「Beyond the 画論〜平成から令和へ〜」をテーマに行われた。最初に登壇した同社超音波開発部主幹の嶺 喜隆氏は,「キヤノンメディカルシステムズが提供する超音波装置の最新技術」について解説した。嶺氏は,高画質化を実現する“iBeam Forming”技術や“iBeam Slicing”技術,各種プローブのほか,ラスタ密度を増し,リニアスキャンに近い画質が得られるHigh-density scan(W.I.P.)や,時系列データを解析してゆらぎ成分をとらえ,映像化することで血管腫の鑑別を行う“ゆらぎイメージング(Functional Imaging:FLI)”(W.I.P.)など,同社の最新技術について,実際の画像などを交えて紹介した。
続いて登壇した医療法人松尾クリニックの松尾 汎氏は,「平成から令和の時代に受け継ぐ画論のこころ」と題して講演した。松尾氏は,1993年にスタートした画論と,この間の日本の疾患構造の変化や医療をめぐる環境の変化を振り返り,その中で超音波機器は技術開発や改良により,機器の小型化や汎用化,客観性の獲得といった進歩を遂げ,在宅医療に不可欠な機器となっていることを紹介した。その上で,検査者・被検者への依存や客観性の欠如などといった超音波検査の欠点についても,技術講習会や機器の改良,撮影方法の工夫といった,メーカーと医師,検査士の3者の取り組みにより,解決が図られつつあるとした。また,画論は最終審査に医師・技師が共に参加し,撮影技術や臨床的有用性などを幅広く評価する賞であり,その中で超音波部門は,検査者の創意工夫と独自の発想により,超音波検査がより高い臨床的価値を発揮することを示した歴史でもある。松尾氏は,画論が今後も患者のより良い生活と医学の発展に役立つ「場」であり続けるべく活動していきたいと述べ,講演を締めくくった。
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The Best Imageには,CTで168件の応募があり〈1〜160列〉〈1〜160列(心血管)〉〈Aquilion ONE〉〈Aquilion ONE(心血管)〉の4部門で16件が入賞。MRは180件の応募があり,〈1.5テスラ以下(脳神経)〉〈1.5テスラ以下〉〈3テスラ(脳神経)〉〈3テスラ〉の4部門で17件が入賞。超音波は119件の応募があり,〈血管〉〈心臓〉〈乳腺・甲状腺・表在〉〈腹部〉の4部門で16件が入賞した。
入賞画像のディスカッションを経て決定された各賞の受賞施設は以下の通りとなっている。
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【受賞施設】
〈CT部門〉
●1〜160列部門
【最優秀賞】
藤田医科大学病院
「舌癌(SCC cT3N1M0)」
【テクニカル賞】
国立研究開発法人 国立がん研究センター 中央病院
「肝門部胆管癌」
日本赤十字社 岡山赤十字病院
「腎細胞癌 膀胱癌 術後肺転移(単純CT)」
【優秀賞】
日本赤十字社 足利赤十字病院
「圧力勾配を考慮したCT-peritoneography」
東邦大学医療センター大森病院
「超高精細CTを用いた胃がん術前CT」
●1〜160列(心血管)部門
【最優秀賞】
医療法人社団水光会 宗像水光会総合病院
「CRT-D術前における冠状静脈洞評価」
【優秀賞】
山口大学医学部附属病院
「右足背の動静脈奇形」
●Aquilion ONE部門
【最優秀賞】
杏林大学医学部付属病院
「心電図同期dynamic volume撮像を用いた可動性プラークの描出」
【テクニカル賞・優秀賞】
大分市医師会立アルメイダ病院
「Excessive Dynamic Airway Collapse(EDAC)疑い」
【優秀賞】
日本赤十字社 さいたま赤十字病院
「アルコール肝障害+肝細胞がん再発」
聖マリアンナ医科大学病院
「両側遺残アブミ骨動脈」
●Aquilion ONE(心血管)部門
【最優秀賞・テクニカル賞】
一般財団法人厚生会 仙台厚生病院
「腎臓に優しいTAVI術前造影CTライクイメージング」
【優秀賞】
日本赤十字社 足利赤十字病院
「unroofed coronary sinus」
医療法人社団 CVIC 心臓画像クリニック飯田橋
「Bridge collateral」
杏林大学医学部付属病院
「乳児大動脈奇形」
社会医療法人 栗山会 飯田病院
「急性冠症候群」
〈MR部門〉
●1.5テスラ以下(脳神経)部門
【最優秀賞】
社会福祉法人康和会 久我山病院
「脳脊髄液動態観察」
【テクニカル賞】
自治医科大学附属さいたま医療センター
「両側内頚動脈瘤」
【優秀賞】
一般財団法人津山慈風会 津山中央病院
「蝶形骨洞腺様嚢胞癌~頭頚部放射線治療におけるCT/MRI Fusion画像の有用性~」
●1.5テスラ以下部門
【最優秀賞】
社会福祉法人 三井記念病院
「CKD患者におけるTAVI術前の評価」
【テクニカル賞】
一般財団法人厚生会 仙台厚生病院
「非造影MRAによるTAVI術前解析」
【優秀賞】
医療法人社団 三喜会 横浜新緑総合病院
「深部静脈血栓症」
社会福祉法人恩賜財団済生会 支部千葉県済生会 千葉県済生会習志野病院
「下肢静脈瘤」
松戸市立福祉医療センター東松戸病院
「アキレス腱断裂」
社会医療法人 川島会 川島病院
「巨大腎動静脈瘤の血流動態の描出」
●3テスラ(脳神経)部門
【最優秀賞】
杏林大学医学部付属病院
「右中大脳動脈分岐部動脈瘤」
【テクニカル賞】
自治医科大学附属さいたま医療センター
「左中大脳動脈動脈瘤ステント併用コイル塞栓術後(再開通疑い)」
●3テスラ部門
【最優秀賞】
杏林大学医学部付属病院
「高傾斜磁場強度3T MRIにおける超高b値と最短TEを用いたDWIの肝腫瘍の良悪性鑑別に対する有用性」
【テクニカル賞】
社会医療法人社団 慈生会 等潤病院
「肝腫瘍・同期撮像が困難な事例 〜Dynamic から肝細胞相まで〜」
【優秀賞】
社会医療法人社団 三思会 東名厚木病院
「腰椎分離症(MR Bone Imaging)」
医療法人 医和基会 戸畑総合病院
「Arterial spin labellingが活動性滑膜炎の診断に有用であった関節リウマチの一例」
●Clinical Update賞
医療法人 為久会 札幌共立五輪橋病院
「肝性脳症の原因となった膵動静脈奇形発見に功を奏した一例」
金沢医科大学病院
「S状結腸癌 小腸浸潤疑い」
〈超音波部門〉
●血管部門
【最優秀賞】
一般財団法人厚生会 仙台厚生病院
「動脈瘤切迫破裂に起因した右総腸骨静脈圧迫症候群」
【優秀賞】
社会医療法人 鳩仁会 札幌中央病院
「頸動脈解離」
東邦大学医療センター大橋病院
「左後脛骨動脈仮性瘤」
徳島大学病院
「右内頸動脈外傷性仮性動脈瘤の一例」
●心臓部門
【最優秀賞】
山口大学医学部附属病院
「リニアプローブを用いることで明瞭な経過観察が可能であった化学療法誘発性心筋症患者の左室心尖部壁在血栓」
【優秀賞】
社会医療法人愛仁会 高槻病院
「心臓血管肉腫」
独立行政法人 国立病院機構 大阪南医療センター
「血液透析導入後の経過観察にて突如僧帽弁輪血栓形成を認めた一例」
●腹部部門
【最優秀賞】
飯田市立病院
「腎動静脈奇形」
【優秀賞】
一般財団法人厚生会 仙台厚生病院
「限局性結節性過形成(FNH)」
医療法人社団浅ノ川 浅ノ川総合病院
「超音波検査が治療方針決定の一助となった膀胱癌の一例」
地方独立行政法人 大阪府立病院機構 大阪母子医療センター
「輪状膵」
鹿児島医療生活協同組合 谷山生協クリニック
「Ball valve syndromeを呈した胃腫瘍性病変」
●乳腺・甲状腺・表在部門
【最優秀賞】
北九州市立八幡病院
「(先天性)下咽頭梨状窩瘻の小児例」
【優秀賞】
江別市立病院
「造影超音波検査が至適生検部位の選定に有用であった乳癌の一例」
兵庫県立がんセンター
「有棘細胞癌の一例」
紀南病院
「再発性多発軟骨炎」
●問い合わせ先
「画論 ザ・ベストイメージ」事務局
メールアドレス:thebestimage@medical.canon
TEL 03-6369-9400
受付時間:9時~17時(土・日・祝日・休業日を除く)
https://jp.medical.canon/