GE Healthcare Japan Edison Seminar 2020

2021年1月号

GE Healthcare Japan Edison Seminar 2020

【CT関連セッション】Deep learning画像再構成法(DLIR)の臨床活用と今後の展望

市川 泰崇(三重大学医学部附属病院 中央放射線部 准教授)

市川 泰崇(三重大学医学部附属病院 中央放射線部 准教授)

CT画像再構成法の進歩は著しく,近年ではdeep learningを利用した画像再構成法(DLIR)が,逐次近似再構成法に代わる新世代の技術として期待されている。GE社からは“TrueFidelity”という名称で製品化されており,当院では約1年前から運用を開始している。また,最近ではdual energy CTにもDLIRが利用可能となっている。本講演では,DLIRの臨床的有用性とdual energy CTにおける初期使用経験を報告する。

DLIRの効果

DLIRでは,あらかじめ構築された学習ずみdeep neural network(DNN)が画像再構成アルゴリズムとして実装されている。このDNNは高画質のFBP画像を教師画像として含んだ膨大なデータセットを用いて,繰り返し学習により構築されたものである。臨床で撮影されたCTデータの画像再構成では,学習ずみDNNを用いて処理を行い,教師画像のようなノイズの少ない高品質なCT画像として再構成される。
当院で撮影した腹部造影CT画像を対象に,DLIRのノイズ低減効果を従来のhybrid IRと比較したところ,DLIRでは平均35〜38%のノイズ低減効果があった。また,CNRについても検討したところ,DLIRの方が平均60%向上していた。以上より,DLIRを用いることで,CTの画質向上とともに,さらなる被ばく低減につながることが期待される。そこで,被ばく線量を約30%低減したCT画像のノイズ評価を行ったところ,DLIRで再構成した画像のノイズは8HU程度で,通常線量で撮影しhybrid IRで再構成した画像と同等のノイズレベルであった。
循環器領域においては,DLIRにてさらなる被ばく低減が期待できる。図1は,noise indexを20から44に上げ,被ばく線量を約80%低減した低線量CT画像である。本症例は,腹部大動脈へのステントグラフト内挿術後であるが,hybrid IRと比較してDLIRではノイズが少なく,ステント内血流の造影効果を十分な画質で評価できる。冠動脈においても同様に,解像度を劣化させることなく強力にノイズを抑制可能である。さらに,被ばく低減が重要となる小児領域では,CTDIvol 0.35mGyと非常に低線量でも,DLIRを用いることで,心臓内の構造や大血管がより明瞭に描出可能であった。
このことからDLIRは,現在主流の逐次近似再構成法を代替しうると考える。

図1 低線量CT(80%減)におけるDLIRの有効性

図1 低線量CT(80%減)におけるDLIRの有効性

 

DLIRのdual energy CTへの応用

DLIRはdual energy CT用にも開発が進められ,臨床利用が可能になりつつある。DLIRを組み込んだGE社のdual energy CTでは,低管電圧と高管電圧の異なる2つのraw dataから,deep learningを用いて高画質の水密度画像とヨード密度画像を生成し,それを基にノイズ成分が低減された高品質な各種画像が再構成される。実際に,dual energy CTを用いた70keV(120kV相当)の肝腫瘍の腹部造影CT画像では,ASiR 30%と比較しDLIRの方が肝臓などの実質臓器のノイズが低減し,画質が向上していた。肝実質にROIを置きSDを計測したところ,ASiR 30%の14.3HUに対し,DLIRでは8HUであった。
また,dual energy CTで得られる仮想単色X線画像は,低keVではコントラストが向上するものの,画像ノイズが増加するという欠点がある。そこで,DLIRを用いることで強力にノイズを抑制でき,低keV画像でも臨床に耐えうる画質が取得できる。図2は十二指腸腫瘍症例であるが,DLIRでは50keVでも高い造影コントラストを保ったままノイズが大幅に低減されており,腫瘍がより良好に描出されている。DLIRは物質弁別画像へも適用可能であり,造影効果判定の精度向上にも貢献する。
dual energy CTにおけるDLIRの物理特性を検証したところ,ノイズ特性や空間分解能,ヨード密度精度評価のいずれも良好な結果が得られた。DLIRは,dual energy CTにおいても空間分解能を維持しながら効果的にノイズを低減できており,DLIR処理によってヨード量の計測値に影響がないことも明らかとなった。

図2 低keV画像におけるDLIRによるノイズ低減

図2 低keV画像におけるDLIRによるノイズ低減

 

まとめ

DLIRは,解像度の劣化なく画像ノイズを強力に低減可能である。また,dual energy CT,特に低keV画像の画質改善にも有用である。

 

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