島津グループで受託分析を手掛ける島津テクノリサーチは，4月1日より，島津製作所の検査技術・装置を用い，認知症の病型の診断補助用途として「血中アミロイドペプチドMS測定サービス」を開始する。同社は2018年より，脳内に蓄積するアルツハイマー型認知症（以下アルツハイマー病）の原因物質とみられるアミロイドβの蓄積具合を調べる検査として，研究開発用途で「アミロイドMS受託解析サービス」を提供してきた。今回島津テクノリサーチは衛生検査所として登録を受け，新たに診断補助用途の検査サービスを開始する^※。

脳内のアミロイド蓄積度合いの推定には，陽電子放出断層撮影（PET）や脳脊髄液（CSF）を用いる方法があるが，いずれも体への負担が大きく，実施できる施設も限られている。本サービスでは，わずか0.6 mLの血漿により測定が可能。本サービスには島津製作所が昨年発売した「血中アミロイドペプチド測定システム Amyloid MS CL」を用いる。本品による測定結果は「認知症に関する脳脊髄液・血液バイオマーカーの適正使用指針」に沿った取り扱いが必要であり，本サービスは認知症専門医がいる医療機関や認知症疾患医療センターに指定されている医療機関での使用を想定している。

^{注：診断補助用途の検体測定は，衛生検査所として登録された施設のみが実施可能。}

「血中アミロイドペプチドMS測定サービス」に使用する島津テクノリサーチのラボ

参考情報：
「アミロイドMS」は，同社のMS（質量分析）技術を用いて，血液数滴に含まれるアミロイドβを測定する技術。同社と国立長寿医療研究センターは，共同研究を通じて，アミロイドβの測定値から算出されるバイオマーカーが脳内のアミロイド蓄積と相関することを報告している^※。共同研究には2002年にノーベル化学賞を受賞した同社エグゼクティブ・リサーチ フェロー田中耕一氏が加わっている。同賞の受賞理由となった「MALDI」（マトリックス支援レーザー脱離イオン化法）が「アミロイドMS」実現に寄与している。

島津製作所は2018年から島津テクノリサーチを通じて，アルツハイマー病に関する治療薬・早期予防法の研究開発を対象とした「アミロイドMS受託解析サービス」を展開してきた。2020年6月には仏モンペリエ大学付属病院と「アミロイドMS」に関する共同研究契約を締結した。同年11月からは米子会社Shimadzu Scientific Instruments, Inc.を通じて，米国でも受託解析サービスの提供を開始した。

^{※Nature volume 554, pages 249‒54（2018）}