長崎大学,NECオンコイミュニティと熱帯感染症を対象としたユニバーサルワクチン設計の共同研究を開始
~最先端のAI技術を活用し,ワクチン開発を加速~
2023-8-21
長崎大学と,NECの子会社であるNEC OncoImmunity AS(NECオンコイミュニティ,注1,以下 NOI)は,高病原性病原体や熱帯病病原体に対して,AI技術を活用したユニバーサルワクチンを設計する共同研究を開始する。
背景
2021年6月,ワクチンを国内で開発・生産するための長期継続的に取り組む国家戦略として「ワクチン開発・生産体制強化戦略」が策定された。本戦略に基づき2022年4月,国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の先進的研究開発戦略センター(SCARDA)が「ワクチン開発のための世界トップレベル研究開発拠点の形成事業」を公募し,同年8月に長崎大学がシナジー拠点の一つとして採択された(注2)。本共同研究は,この採択事業の一つとして実施される。
本共同研究の概要
本共同研究では,最先端のAI技術を活用し,熱帯地域で流行している特定の病原体の多くの株のみならず,近縁種の病原体に対してもに幅広く予防効果を発揮するユニバーサルワクチンの設計を目指す。NOIは,AI技術を活用しT細胞やB細胞といった免疫機構を活性化するユニバーサルワクチンを設計する。長崎大学は,最先端の研究基盤と熱帯病フィールド拠点(注3)で採取する感染症回復期の試料を用いて,効果的なワクチン開発に向けた検証データを収集する。
また本共同研究の一環として,長崎大学熱帯医学研究所に感染ゲノム学分野を設置した。本分野には,NOIのチーフサイエンティフィックオフィサーであるTrevor Clancy氏が教授として着任し,開発には,NECのワクチン創薬に携わるメンバーも参画する。これにより,AIやコンピュータ技術を採用した熱帯病基礎研究を推進し,感染症における免疫機構の関係性解明を目指す。
本件に関する各者のコメントは以下の通り。
熱帯感染症を対象としたユニバーサルワクチンの開発を目指し,NECオンコイミュニティとの共同研究を開始できることを大変嬉しく思います。長崎大学の熱帯医学の専門知識とNECの高度なAI技術を組み合わせることで,グローバルヘルスのためにワクチン開発を大きく前進させることを目指します。そして,今後さらに気鋭の研究者を雇用していく予定であり,新たに設置した感染ゲノム学分野の研究室を,AIを用いた感染症対策の世界的な研究拠点にしていきたいと考えています。
長崎大学 理事(研究・社会連携・戦略企画担当) 永安 武 氏
NOIのコア技術であるAI技術はユニバーサルワクチンの開発に適しており,私たちは長崎大学とともに,高病原性病原体や顧みられない熱帯病をはじめとする熱帯感染症をターゲットとした効果的なワクチン設計の実現に全力を尽くします。このような世界的に有名な熱帯医学研究所と協力できることは大変喜ばしく,このプロジェクトから大きな成果を期待しています。
NOI CEO Richard Stratford 氏
長崎大学と熱帯病予防に対するワクチン開発の共同研究を開始できたことに,大変喜びを感じています。本共同研究でデジタル技術と熱帯医学研究の知見を融合させ, ワクチン開発における新たなイノベーションを実現していきます。新型コロナウイルス感染症によるパンデミック以降,感染症発症予防の取り組み対策の重要性は増しています。NECグループは,最先端のAI技術を活用して,より良いワクチンの提供へ向け貢献してまいります。
NEC Corporate SVP 兼 ヘルスケア・ライフサイエンス事業部門長 北瀬聖光 氏
(注1)本社:ノルウェー オスロ,CEO:Richard Stratford
(注2)長崎大学,ワクチン開発拠点に~パンデミック発生時の100日でのワクチン供給を目指して~:令和4年度 「ワクチン開発のための世界トップレベル研究開発拠点の形成事業」に採択
https://dida.nagasaki-u.ac.jp/122/
(注3)長崎大学が,フィールド研究を行うため熱帯病の流行地に保有する海外感染症研究拠点。ケニアやベトナムに拠点がある。
●問い合わせ先
長崎大学 研究国際部 感染症研究支援企画課
E-Mail:soumu_nekken@ml.nagasaki-u.ac.jp
NEC AI創薬事業部
E-Mail:contact@aidd.jp.nec.com