サイバネットシステム,大腸内視鏡診断支援AI「EndoBRAIN-EYE®」が診療報酬の加算対象に
2024-2-15
サイバネットシステム(株)(以下「サイバネット」)は,内視鏡画像診断支援ソフトウェア「EndoBRAIN-EYE(エンドブレインアイ)」に関し,大腸向けプログラム医療機器として国内で初めて保険医療材料評価区分(以下,「区分」)※1 「C2(新機能・新技術)」となる案が,中央社会保険医療協議会(以下,「中医協」)の医科診療報酬点数表改正案にて公示されたことを発表した。
公的保険の診療報酬加算実現により,医療機関のAI医療機器導入拡大と病変の早期発見に期待
医療機器に搭載するAIはプログラム医療機器と呼ばれ,2018年に国内で初めて薬機法の承認を得た「EndoBRAIN®」を皮切りに現在20を超えるプログラム医療機器が販売されている。これらの医療材料区分の多くは,公的保険における診療報酬が加算されない「A1(包括)」であり,プログラム医療機器(SaMD:Software As a Medical Device)への投資が大きく広がらない要因の一つとなっていた。
サイバネットは,「区分A1」の「EndoBRAIN-EYE」に関するチャレンジ申請※2 の活動を2022年2月より実施していた。厚生労働省による本製品の臨床的有効性※3 の審議では,専門医が本品を使用することで腫瘍の発見率が向上し,将来的に患者の大腸癌リスクを低減する可能性があることを評価され,2024年2月の中医協総会において「区分C2(新機能・新技術)」となる医科診療報酬点数の改正案※4 が公示された。このことは,改正後の診療報酬が適用される今年6月より,本製品を用いて大腸癌・ポリープ等の病変を検出し内視鏡手術を行った医療機関には,技術料として保険点数が60点加算される方向性が示されたこととなる。
今回の新区分適用により,医療機関において大腸内視鏡診断支援AIの導入が加速され,大腸癌・ポリープの早期発見につながることが期待される。また,プログラム医療機器全体の普及も進み,患者がより精度の高い診療を受けられる環境が増えることが期待される。
EndoBRAIN-EYEとは
EndoBRAIN-EYE(2020年発売)は,国内5施設(昭和大学横浜市北部病院,国立がん研究センター中央病院,静岡県立静岡がんセンター,東京医科歯科大学医学部附属病院,公益財団法人がん研究会有明病院)が学習画像を提供し,名古屋大学大学院情報学研究科森健策研究室が基本となるAIエンジンを開発,サイバネットにより実装開発し薬機法承認を取得した本邦初の病変検出用内視鏡画像診断支援プログラム。
大腸内視鏡で撮影された内視鏡画像を人工知能(AI)※5 が解析し,ポリープなどの病変を検出すると警告を発し,医師による病変の発見を補助する。本ソフトウェアはオリンパス社製の汎用大腸内視鏡に対応し,多くの機種と組み合わせて使用することができる。
■医薬品医療機器等法※6 クラスⅡ・管理医療機器(承認番号:30200BZX00208000)※7
『EndoBRAIN』シリーズ
「EndoBRAIN」シリーズは,大腸内視鏡における病変の検出・鑑別から治療方法の選択までの一連の工程をAIで包括的に支援し,医師の診療を補助するソフトウェア群。
大腸がんは,近年日本のがんによる死亡数2位※8 と増加傾向にある。最新のAIと内視鏡技術で,内視鏡検査に携わる医療従事者の負担軽減に一層寄与できるよう,今後も製品開発・改良に力を入れていく予定。
EndoBRAINシリーズの詳細については,下記Webサイトを参照。
https://www.cybernet.co.jp/medical-imaging/products/endobrain/
サイバネットの医療分野への取り組み
サイバネットでは,仮想気管支鏡ナビゲーションソフトウェア「DirectPath(ダイレクトパス)」,汎用DICOM※9 データ3Dエディタ「INTAGE Station(インテージ・ステーション)」シリーズ, 内臓脂肪面積計測ソフトウェア「SlimVision(スリムヴィジョン)」や,肺計測ソフトウェア「LungVision(ラングヴィジョン)」など,長年,医療用製品の開発・販売を行ってきた。国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)などの公的研究費の支援を受け,昭和大学,名古屋大学とAIを用いた高精度な画像診断支援ソフトウェアの共同研究を続けている。
注釈
※1:保険医療材料の評価区分:厚生労働大臣が,厚生労働省に設置された中央社会保険医療協議会(略称:中医協)の意見を基に決定する区分。現在,区分には「A1(包括)」「A2(特定包括)」「A3(既存技術・変更あり)」「B1(既存機能区分)」「B2(既存機能区分・変更あり)」「B3(期限付き改良加算)」「C1(新機能)」「C2(新機能・新技術)」「R(再製造)」がある。
※2:チャレンジ申請:保険医療材料には,革新性の高い技術を伴うものや長期に体内に埋植するものがあり,保険収載までの間に最終的な評価項目を検証することが困難な場合がある。チャレンジ申請は,このような使用実績を踏まえた評価が必要な製品に対して,製品導入時には評価できなかった部分について,使用実績を踏まえて保険収載後に新規機能区分の該当性について再度評価を行うことができる仕組みを指す(2018年に新設)。
※3:EndoBRAIN-EYEの臨床的な有効性について:
■検証した論文例:
Ishiyama M, Kudo S, et al. Gastrointest Endosc 2022;95:155-63
■「令和6年度診療報酬改定に向けた医療技術の評価について(案)」令和5年度第2回診療報酬調査専門組織・医療技術評価分科会 議事次第 12頁(全資料内83頁)
(厚生労働省 厚生労働省保険局医療課 企画法令第二係 公表資料(2024年1月15日))
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001209024.pdf
※4:「別紙1-1 医科診療報酬点数表」中央社会保険医療協議会 総会(第584回)議事次第
(厚生労働省 厚生労働省 保険局医療課企画法令第1係 公表資料(2024年2月14日))
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001209396.pdf
EndoBRAIN-EYEが該当するのは285頁「第10部 手術 第9款 腹部 K721 内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術」
※5:人工知能(AI):EndoBRAIN-EYEが採用しているAIはディープラーニングと呼ばれる機械学習の一種であり,市販後に自ら学習を繰り返して性能が向上するタイプのAIではない。
※6:医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律(医薬品医療機器等法):薬機法ともよばれる法律で,医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器および再生医療等製品の品質,有効性および安全性を確保し,医療機器の安全対策強化や,医薬品・医療機器・再生医療等製品などの承認・規制を目的とするもの。この法律では診断・治療を目的としたソフトウェアも対象となる。
※7:医療機器は多種多様であるため,患者に与えるリスクに応じて,一般医療機器(クラスⅠ),管理医療機器(クラスⅡ),ならびに高度管理医療機器(クラスⅢとクラスⅣ)に分類されている。
※8:国立がん研究センター発表資料『最新がん統計』(2022年11月16日更新)「がん死亡数の順位(2021年)」より
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html
※9:DICOM:Digital Imaging and Communications in Medicine。CTやMRI,CRなどで撮影した医用画像のフォーマットと,それらを扱う医用画像機器間の通信プロトコルを定義した標準規格。
●問い合わせ先
サイバネットシステム(株)
医療ビジュアリゼーション部/久保田
E-MAIL:med-info@cybernet.co.jp