VARIAN RT REPORT

2025年7月号

人にやさしいがん医療を放射線治療を中心に No.28

人とシステム,そして効率的な治療業務をつなぐ ─ARIA COREとバリアンAOSがもたらす新たな可能性─

永安結花里(株式会社バリアン メディカル システムズ, Advanced Oncology Solutions部)

はじめに

(株)バリアン メディカル システムズ(バリアン)は,「A world without fear of cancer─がんの脅威に負けない世界」をビジョンとし,医療従事者の皆様と共に歩んできた。バリアンが展開する「Advanced Oncology Solutions(AOS)」は,放射線治療装置や治療計画装置(treatment planning system: TPS),放射線腫瘍学情報システムの導入後,医療機関がより効率的に,かつ円滑に臨床業務を実施できるようにサポートを行う包括的な支援サービスである。放射線治療部門におけるワークフロー最適化サービスである2つのプログラム「ワークフロー最適化提案」および「ARIAスタートアップサポート」を用意し,提供している。本稿では,日本の現状と課題を踏まえながら本サービスを解説し,今後の展望について紹介する。

国内における放射線治療部門が抱える課題・海外の状況

日本国内の医療機関では,医療情報部が病院情報システム(hospital information system: HIS)や情報技術(information technology:IT)関連を統括する一方で,放射線治療部門のシステム管理は,現場の医療従事者である診療放射線技師や医学物理士などが兼任し,対応しているケースが多く見受けられる1)。そのため,日々の臨床業務に加えて,放射線治療部門および放射線科情報システム(radiology information system:RIS)といった治療に関連したシステムの運用・保守・トラブルにも対応しなければならない状況がある。さらに,地方では地域差や地理的制約により,人員配置の偏りや病院間の情報共有の難しさも見受けられる2),3)。一方,海外では専任のITアドミニストレータがIT・情報システムの管理・運用を行っており,医療従事者は本来の専門職の日常業務に集中して従事できる体制が整っていることが一般的である4)。日々の業務のワークフローには,治療計画のチェックといった放射線治療のインシデントを未然に防ぐ重要な業務も含まれており,立案後の治療計画やカルテ記載事項の確認が行われる。これらの作業は,医療情報システムやRIS ,TPSを横断的に確認する必要があり,その運用およびシステム構築は,安全性や業務効率の観点からもきわめて重要である。しかし,こうした業務の具体的な実施方法について体系的にまとめられた勧告はほとんど存在せず,業務に従事する担当者が,何をどのように取り決めるべきか迷う場面も少なくない。

AOSが提供するサービスの詳細

1.ワークフロー最適化提案
ワークフロー最適化提案のプログラムにおいては,バリアンのAOS専任のコンサルタントが医療機関の実際の現場を訪問し,医療従事者の皆様からヒアリングを実施する。本プログラムのヒアリング計画の一例を表1に示す。おのおので課題分析を行い,1〜4週間後に報告書としてVarian Oncology Solutions Observation Reportを医療機関へ提出する。報告書の内容には,それぞれの課題に対する推奨事項を明示し,それらは安全性・業務効率などの観点から主に説明される。HISや放射線腫瘍学情報システムといったシステム間の連携の相互運用性などについても考慮した提案内容も含まれる。課題分析の際には,米国医学アカデミーが定義した,以下の評価指標5),6)を使用する(図1)。これらの6つの要素から課題を洗い出し,以下の大きく3つの観点から本報告書をまとめる。
● スタッフ:適切な人員配置や業務量および負担,安全性に関する提案
● テクノロジー:高精度放射線治療に適した技術の導入の提案
● プロセス:標準化,もしくは個別化した業務運用となるようなワークフローの提案
これまでにワークフロー最適化提案を実施した国内の10施設において,主な要望としては,リニアックの増設を見据えたワークフローおよびシステム運用の見直し,自施設に導入ずみのソフトウエアをより効果的に活用するための相談,他医療機関における実践的な運用例の共有などが挙げられる。放射線治療関連のシステムは,導入後6〜10年以上にわたり使用されることが一般的であり,導入前や稼働後に他施設の事例や技術的な支援を得ることは,医療機関が継続的に運用を最適化し続けるのに有益である。ワークフロー最適化提案は,医療機関の担当者へ十分な情報提供を行い,最適なワークフローおよびソリューションを提案することを目的としている。

表1 ワークフロー最適化提案実施のタイムテーブルの一例

表1 ワークフロー最適化提案実施のタイムテーブルの一例

 

図1 医療の質を評価する6つの指標

図1 医療の質を評価する6つの指標

 

2.ARIAスタートアップサポート
ARIAスタートアップサポートのプログラムでは,「ARIA CORE Radiation Therapy Management(RTM)」および「ARIA CORE Oncology Information System(OIS)」の導入・活用を支援する。ここではARIA CORE OIS導入に関する主な内容を以下に示す。
● 現状運用の課題と改善点の洗い出し(ワークフロー最適化提案の報告書より)
● ARIA CORE OIS導入後のワークフローおよびシステムの運用デザイン
● ARIA CORE OISの特徴的な機能であるCare Path, 文書作成機能,ARIA reporting solution(AURA:帳票・データ集計),eDoc(仮想プリンター機能)
などのソフトウエアの適切かつ効果的な活用法の提案
● 医療機関の運用に合わせた仕様へのカスタマイズ実施
このように,従来の紙ベースの運用をペーパーレス化へ移行,データの保存性向上,効率的な情報管理などの環境をより充実させることができる。Care PathやAppointment Scheduling機能を組み合わせることで,スケジュール管理の強化や現場スタッフの作業の負担を軽減することが可能となる。このように,普段使用していたARIA CORE RTMを,RIS内で行ってきた業務の範囲までカバーできるARIA CORE OISに拡張することで,円滑にシステム運用することが可能である。

海外での活用事例の紹介および日本における今後の展開

近年のグローバルでのAOSの本サービスの活用事例として,英国のRoyal Marsden Hospital(RMH)では,ペーパーレス化による効率性の改善や情報の誤記の削減,情報保存性の向上をARIA CORE OISの導入とともに実現した7)。現在,医療情報システムは多数の部門システムから構成されており,システムが複雑化するにつれて,システム間インターフェイスの設計,共通の用語,統一されたセキュリティ基盤に関する知識も多く求められる。院内における情報共有のためには,相互運用性の確保が不可欠であるが,業務範囲をどこまでカバーするかは,詳細な分析と検討を行った上で判断する必要がある。そのため,データの互換性やシステム間の接続性,共通基盤に関する理解はきわめて重要である。さらに,2023年5月には,厚生労働省より「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第6.0版」が公開8)されており,システム導入後も安全かつ安定的に稼働させるためには,常に最新の知識と理解が求められる。また,近年ではonline-adaptive radiation therapyの実臨床での運用が進む中,データ管理方法やワークフローについても新たな対応が求められている。ARIA CORE OISは,システムの簡素化およびシームレスな統合を重視しており,これらの動向に対応するかたちで,本サービスの2つのプログラムを含む,ワークフロー最適化サービスのさらなる充実をめざしている。本サービスを通じて,施設全体の安全性および運用効率の向上を支援するとともに,継続的な情報共有や事例紹介を通じて,医療従事者の皆様と共に放射線治療部門システムのさらなる進化・発展に貢献できれば幸いである。

●参考文献
1)Ikeda, R., Ogasawara, K., Okuda, Y., et al. :  Survey on medical information education for radiologic technologists working at hospitals. Nihon Hoshasen Gijutsu Gakkai Zasshi, 67(5) : 541-548, 2011.
2)舩岡伸光 : 日本における放射線治療体制の現状分析. 関東都市学会年報, 18 : 44-51, 2017.
3)特集 少数常勤医および地方における放射線治療の現況と対策. 2023 JASTRO NEWSLETTER, 155 : 31-40, 2023.
4)Safety is No Accident. American Society for Radiation Oncology(ASTRO), 2019.
5)Institute of Medicine (US) Committee to Design a Strategy for Quality Review and Assurance in Medicare : Medicare : A Strategy for Quality Assurance. Lohr, K.N., ed., National Academies Press (US), Washington(DC), 1990.
6)一般社団法人日本医療・病院管理学会 : 医療の質指標.
https://www.jsha.gr.jp/glossary-keyterm/r5/quality-of-care/ (2025年5月9日参照)
7)Varian Medical Systems. : Unlocking Clinic Efficiency, Improving Patient Experience by Optimizing Digital Oncology Tools.
https://www.varian.com/resources-support/blogs/unlocking-clinic-efficiency-improving-patient-experience (2025年5月9日参照)
8)医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第6.0版. 厚生労働省, 2023.

画像照合用ソフトウェアARIA Offline Review:
認証番号 227ADBZX00084000

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