バイエル ソリューションレポート
2025年10月号
NTT東日本関東病院 安全性を確保しながら効率的に運用できることがCentargo導入の一番の決め手
JCI*の国際規格取得施設であるNTT東日本関東病院にCentargoCTインジェクションシステム(バイエル薬品社製)が導入された。運用開始後に得られたメリットと、課題に対する対応策を中心に福地 達夫 先生(放射線部技師長)にインタビューした。
*Joint Commission International : 国際医療機能評価機関

放射線部の皆様

NTT東日本関東病院
放射線部
技師長
福地 達夫 先生
増員せずに、インジェクタで効率化を図る
従来のCT用インジェクタの場合、生理食塩水(生食)を準備しても小さな気泡を取り除くことは困難で、人の手によるエア抜きの限界を感じていた。
また、当院では感染対策として予めシリンジにフラッシュ用の生食を充填しておく『作り置き』をしないという運用ルールが徹底されている。
そのため、都度検査ごとに生食フラッシュの有無を確認し、空のシリンジに生食を充填し、デュアルチューブを生食と造影剤の両方のシリンジに接続してインジェクタに取り付ける作業が発生していた。
これらの手順は当然のこととして実施していたものの、私自身も過去これらの作業を経験し、手間がかかることは認識していた。しかし、Centargo導入後は、それらの作業が必要なくなった。
Centargoは、静脈注射など、診療放射線技師の業務が増える中、「増員せずに、効率化を図れる機器を導入したい」という現場のニーズを満たしてくれる。
安全性と効率性の両立が決め手
単に効率性を求めるというよりも、安全性を高めながら、運用効率を上げられる可能性があることがCentargo導入の一番の決め手となった。
新しい機器を導入するにあたり、メリットと課題を把握するために、放射線科スタッフ(診療放射線技師6名/看護師8名)の意識変化を調査したので紹介する。
まず、マルチペーシェント用インジェクタを初めて導入するとなると、長年慣れ親しんだシリンジ製剤からバイアル製剤へ切替えるだけでなく、1患者ごとにシリンジを使い捨てていた手順から、24時間同じシリンジを使うシステムへと変わり、さらには操作画面のデザインや手順が変わるのだから、移行期には混乱が発生することをあらかじめ想定し、それに備えておくことが重要である。
当院の導入前調査では、4名の看護師がCentargoの安全性について懸念を抱いていたが、使用してみると、その懸念は払拭された(図1)。
実際、Centargoの生食充填、エア抜き機能は人よりも丁寧な動きをするので感動している。

図1 Centargoの安全性に関する意識調査(感染性に関する内容含む)
また、手間のかかっていた造影剤/生食の準備作業についても期待通りに軽減された(図2)。

図2 Centargoの作業効率に関する意識調査
一方で、導入直後に、スタッフの間で操作性に関する意識に格差があるという課題が見えてきた(図3)。

図3 Centargoの操作性に関する意識調査
新しいものに踏み込めないスタッフにも配慮する
そこで、スタッフ間で、小さな気づきだとか、小さなトラブル等を共有するために“Centargoを効率的に運用するチーム”をつくり、仕事用末端(PC)に情報を集めてみると、「プロトコルの設定が難しい」などの具体的な意見が集まった。
それらの課題に対する解決策がスタッフ間で情報交換されるようになり、さらに、私の方でも『知って欲しいことと注意するポイント』と題した冊子(図4)を用意して、それをベースにした勉強会や、新任スタッフに、一つの読物として提供し、部内の教育に活用している。
新任スタッフには、新しいものに踏み込めないといった心理的バリアに対しての配慮が大切だと感じた。

図4 技師長が作成したスタッフ用のオリジナル冊子の表紙
同時注入プロトコルを使いこなすために
Centargoでは、高濃度造影剤と生食を同時注入しIDR*をコントロールする機能を用いて、あらゆる検査に対応している。
しかしながら、これまでは幅広い濃度、容量のシリンジ製剤を取り揃えていたため、導⼊当初は、⾼濃度製剤と⽣⾷による注⼊プロトコルの設定が、従来と異なることに⼾惑いを感じる技師もいた。
そこで注⼊プロトコル表(図5)を作成し、数値入力画面メニューの階層を工夫したところ、導⼊半年後の評価では、設定が難しいと感じる技師はいなくなった(図6)。
さらに、この機能を利用することで、使用する製剤の種類を減らすことができる利点もある。
*ヨードデリバリーレート

図5 当院の同時注入プロトコル

図6 Centargoの造影剤注入量設定に関する意識調査
異常注入の原因特定にも役立つ注入データ
JCIでは、〔医療の標準化〕と、〔その記録〕が認定時のポイントとなる。
どんなことでも記録を残しておくことが重要になるが、CT検査の標準化の部分では、撮影プロトコルと造影剤の注入プロトコルが対象になると考える。
Centargoは、CT装置と連動しており、検査終了後に造影剤の注入圧レート(カラー表示)、注入速度、注入量がPACS側に自動保存され、注入設定と実際の注入結果の対比が可能となる(図7、8)。
記録された造影剤注入データは、異常注入の原因などを特定する際の貴重なデーターベースとなる。

図7 冠動脈CT検査における造影剤注入結果
・このグラフはCT装置から出力されPACSに自動保存される
・造影剤と生食の注入圧、造影剤モニタリング位置のCT値、ボーラストラッキングと本スキャンの撮影時間が、造影剤投与開始からの時系列で表示される

図8 冠動脈CT検査における造影剤注入結果
・このケースでは注入設定に対し、造影剤注入が遅延し、注入時間が1秒延長したことが示されている
・使用量は注入設定どおり投与されている
(2025年7月29日取材)


管理医療機器 / 多相電動式造影剤注入装置
販売名 / Centargo CTインジェクションシステム
認証番号 / 302AABZX00091000
管理医療機器 / 造影剤用輸液セット
販売名 / Centargo ディスポーザブルセット
認証番号 / 303AABZX00003000
【製品に関する問い合わせ先】
バイエル薬品株式会社 ラジオロジー事業部
TEL 0120-609-040
https://radiology.bayer.jp/
PP-M-CEN-JP-0478-27-08